指名手配犯と捨て子は手を取る。

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しばらく、背中をとんとんと優しく叩いていると、五条さんが動いた

顔を見ると吃驚している様な顔だったので、目が覚めたんだなと理解した

「…状況が、分からないんだけど…？」

「分からなくても大丈夫です」

「いや駄目でしょ、僕なんか言ってた？」


「……特に」

「今の間！正直に言ってお願いだから！」


「疲れた…って」

「他には？」

「あったかいとか」
「他には…？」

「しばらくこうしてたい…」

「…………他……」

「ないです」


五条さんは自分の顔に手を当てて、項垂れている
寝起きは弱い事が分かった
ちょっと嬉しかった

五条さんはしばらく唸った後、両手を顔に当てたまま篭った声で

「分かった、今度からは別で寝よう」

と言った

「えっ─…」


「だって僕の情けない姿見せたくないし、普通に恥ずかしいし…超絶可愛いと思われても仕方はないけど流石にキツイ…」

「いやです」

「僕もやだ」


これからは別のベッドで寝る、と言ってきかなかった
少し我儘を言いたくなった
けど、言うのはやめた


「よし、次のホテルまで、また忙しいよ」


「…五条さん、黒髪を戻すのは何時ですか」


「……さぁ、何時になるかな。やる事やって、警察も追って来れないようなとこまで行ったら、戻すかもね」


「海外逃亡とかしちゃう？面白いかもよ」

「…海外…」


「興味ある？」

「…ちょっとだけ」

「どこか行きたい国は？機会さえ作っちゃえば行けないこともないよ」


国…
スイスに行きたいとフッと頭に浮かんだ

しかしそれよりも

「五条さんと行けるならどこでも、私はいいです」


「！」


「…楽しいので」


「くくっ、何、僕と居るの楽しいの？」

「楽しいです」


「それは僕と一緒に過ごしたいってことかな？告白？やだ青春〜」

「願わくば過ごしていたいです」




「…マジ？」


「マジです」



「まっ、前提として捕まらないが先だけど…」


「もし捕まらないで僕の役目が終わったら、一緒に住んでもいいよ？僕もAの事ちょっと気に入ってるから」


「いいんですか…！」


「捕まらなかったらね、そうと決まれば、ほら、パッパっと用意して、行くぞ〜」


この逃亡が終わったら、私も五条さんも別々になると思ってた

でも、どうやらそこは心配ないかもしれない

一緒に居れるかもしれない


いつも五条さんの後ろにピタリとくっ付いていた私は、今日は足を早めに進めて五条さんと同じ歩幅で歩いている

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