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外に出ると空はまだ薄いオレンジ色だった。
この時間に帰るのなんていつぶりだろう。
「…あ、」
真っ直ぐ歩きかけたところで足を止める。
頭に浮かんだのは子猫のことだった。
餌、適当に買っていくか。
─
「生きてるかー」
昨日と同じ場所。傘もそのままで子猫はダンボールの中にいた。
「あれ。お前、飯もらってるやん。俺以外にもおんねんな」
ダンボールの中に少しだけ水の入った猫缶があって、まだ新しかった。
「ま、腹減ってるやろ。今日もしのがなあかんねんから」
空いた缶を回収して、買ってきた餌をあげた。
すぐには手をつけなかったが、そのうち腹が減れば食べるだろう。
それから少しの間、無言で子猫を眺めた。
「そういや、うちのマンションってペット飼えるんやったかな」
ぽつりと誰もいない道で呟く。
聞いといたるわと子猫に言っても意味が分かるはずはなく、それは独り言として消えた。
─
「あれ、今日早いな？」
「トントンやん、チッス」
マンションの4階、自分の家に向かう廊下を歩いていると2つ隣に住むトントンがドアを開けて出てきた。
どこかへ行くところだったのだろうが、俺が左手に提げているビニール袋を見て足を止めた。
「てか、その袋どうしたん？」
「あぁ、猫缶。捨て猫がおんねん」
「はぇ〜お前も優しいとこあるんやな、意外と」
「『意外と』は余計やわ」
可笑しそうに笑うトントンに軽く突っ込むと、トントンは何か思いついたような顔をする。
「せや、せっかくやし飯一緒に食わん？今から買い出し行こうと思っとったんやけど」
「おー、ええな」
「じゃあパッと行ってくるし待っとって」
「りょーかい」
そうして夕食をトントンと食べることになり、トントンの背中を見送ってから部屋に上がった。
「相変わらず綺麗やな〜部屋ん中」
適当にテーブルの側に腰を下ろし、トントンが帰ってくるまでスマホをいじって過ごした。
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