【d!】恋のキューピッド【zm】 (ページ4)

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Day1

「お疲れ様です〜お先に失礼しま〜す」

次々に帰っていく同じ部署の奴らの声を聞きながら目の前のパソコンを睨みつける。

くっそ……こんなん終わるわけないやんけ。

大量の仕事を押し付けてきた上司を心の中でボロクソに言いながら黙々と作業を続ける。

普通に大学を卒業して、普通に働き始めて。特別な目標なんか特になかった。

この会社に決めたのだって、内定を貰えたうちでここが一番給料が高かったからだ。

働き始めて約5年、何度も辞めようと思ったが職を失って親に泣きつくのも嫌だから何とか辛抱している。

「お疲れ〜」

俺の後ろを上司が通り過ぎていく。部下に仕事押し付けて先に帰るなや。

愚痴は減ることを知らず、毎日着実に増えていく。

結局、この日のノルマを達成したのは21時を過ぎた頃だった。

お疲れ様でしたなどと言う気力もなくて、すれ違う警備の人や他の部署の人に軽く頭を下げながら足早に会社を出る。

「さっむ…」

当然だが辺りは真っ暗で、風は冷たいしおまけに雨も降っていた。

このまま歩いて帰れそうな天気ではないから近くのコンビニでビニール傘を買って、ついでに夜食も買った。

雨は止むことなく、むしろさっきより強くなっている気もする。

早く帰ろう。

早足で街灯の少ない近道を歩き、そのうち小走りになる。

と、その時。雨の音に混じって、にゃあと猫の鳴き声がした。

「ん？なんやお前、そんなとこで」

足を止めて声のした方を向けば、大きめのダンボールの中で小さな一匹の子猫が震えていた。

「捨てられたんかぁ、可哀想に。」

しゃがんで子猫を見ると、俺を見上げて弱々しくまた鳴いた。

このまま雨が激しくなれば、こいつはこの寒い夜の中を耐えないといけない。

こんな夜の中、人通りの少ないこの道では誰も拾ってくれないだろう。

「……はぁ、これで少しはマシやろ」

買ったばかりのビニール傘を、ダンボールを覆うように立てかけてやった。

そうして、俺は雨の中を走って家に帰ったのだった。