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Day3
「あ、ちょっといいか？」
「なんですか」
昼食を終えてオフィスに戻ると、上司が俺のデスクまで来た。
また仕事増やしてくるのかと思ったら、今日は違った。
「これ、今日はこの仕事だけ終わったら帰ってもええから」
「え、納期間に合うんすか？」
「相手側と会議の調節したら余裕できてん。やからとりあえずこれだけ頼むな」
「はぁ、わかりました」
本当に良いのか、これだけなら少し残業するだけで終わる。
仕事が増えるよりはこっちの方が何億倍もマシだから、今日のところは早く終わらせて帰ろう。
それから午後の仕事はいつもよりも気合を入れて頑張った。
─
「確認お願いします」
「お、早いな。じゃあもう上がってええよ」
「お疲れ様でした」
仕事が終わったのは18時を少し過ぎた頃。
2日連続でこんなに早く帰れるなんて珍しい。いつもはブラックなのに。
心の中でそんなことを思いながら会社を出て、しっかり捨て猫のための餌も買った。
─
いつもの道までくると、そこに子猫の姿はダンボールごと消えていた。
「──と思うから、誰かが拾ってくれるまで、もう少し待ってて」
ふいに聞こえた女の声。その方に目を向けると、植え込みの陰でしゃがんで話す若そうな女の姿があった。
「えっ」
同じタイミングで子猫のところに来る人がいることに驚いて思わず声を出すと、その女はこちらを振り向いた。
「こ、こんにちは」
「…ども」
しゃがんだままで目を俺に合わせたまま頭を下げる素振りをする彼女は童顔で、スーツじゃなければ学生でもおかしくなかった。
彼女は次々に話し出す。
俺が手に持ってる袋の中身を言い当て、前に傘を置いたのは俺かとか色々聞いてきた。
ぽんぽんと言葉を放つのが面白くて、初対面なのに思わず笑った。
初対面で、しかも異性に対してこんな風にすることはあまりないのに。
というか、何故か初対面じゃないような気さえした。
それは、同じ子猫をお互いに世話し合っていたからかもしれない。
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