20歩 ページ22
「久し振りやな、A」
私を抱きしめた人物。
それは────
「シャオ、ロ……」
「もっと余韻に浸りたいけど、ごめんな。時間ないねん」
私の前に現れた人物は本物のシャオロンなのか。
あまりに望みすぎて幻を見ているのか。
だけど確かに私の手を掴んで走りだす。
どうしてここにいるのか、そしてどうして、関係者だけが入れるこの控え室に来られたのか？
「A、とりあえず裏口から出て走るぞ！」
「う、うん！」
廊下には誰もいなくて、このルートも全部考えられているように感じた。
裏口まで辿り着き、少し走ると視線の先に軽自動車が1台停まっている。
シャオロンが後部座席のドアを開けて私を座らせ、助手席に乗る。
「元気やったか？A」
「ロボロ！」
運転席に座るのはロボロ。
どうして、2人が私の目の前に？
「よし！じゃあ行くぞ〜」
車が走りだし、式場が徐々に遠くなる。
「あの、2人とも、なんで…」
「この半年間、色々あったんやで？Aが結婚するって聞いてからもずっと計画立ててたし」
「そう！ロボロから結婚の話聞いてな、絶対に迎えに来ようって2人で話してん」
もう少し前から聞きたいけど、こうして2人が迎えに来てくれたことが何より嬉しかった。
でも、それと同時に不安もある。
私が控え室を抜け出してきたことで、今頃騒ぎが起きていることは確実だ。
「これからずっと遠いところに連れて行ったるからな！親のことは心配すんな、絶対にわからんくらい離れとるから」
「…でも、良いの？」
「良いのって何が？結婚するなら幸せなほうがええやろ？」
シャオロンはそう言ってくれるけど、お母さんの言うことを破って逃げて生き続けるのは怖かった。
それにあの日、私はシャオロンのことを傷つけてしまったのに。
「俺としては2人が結婚してくれると嬉しいんやけどな〜」
「ほら！ロボロもこう言ってるやん！やっぱ俺ら結婚するしかないで〜」
「2人とも、全然変わってない。特にシャオロン、あの時のこと……気にしてないの？」
私は恐る恐る聞いたけど、シャオロンはニカッと笑った。
「なにが？だってあれは親の押し付けやん。Aは悪くない。俺と関わるかどうかはAの意志で、今はこうして俺と居る」
「いいね〜シャオロン。男前やな！」
そうか、もう親とは離れた。
今まで追いついていなかった感情がようやくやって来て、涙が溢れる。
これからは、自分の意志を持ってもいいのかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 77人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
岡崎 響(プロフ) - 甘夏さん» 大丈夫ですよ！むしろコメント大歓迎です(泣)最後までお付き合い頂いて本当にありがとうございました…！ (2018年1月18日 19時) (
レス) id: cbd4920d57 (このIDを非表示/違反報告)
甘夏 - なんどもコメントしてすみません…。完結、おめでとうございます！最初から最後まで楽しんで読ませてもらいました！改めてしゃおさん好きになりました！ (2018年1月18日 18時) (レス) id: 8417dea29b (このIDを非表示/違反報告)
岡崎 響(プロフ) - 中沢 琴葉さん» ありがとーーう！！無事に完結しました！(満面の笑み)どうしてもシャオロンに連れ出して欲しかったんだ…！ (2018年1月18日 18時) (レス) id: cbd4920d57 (このIDを非表示/違反報告)
中沢 琴葉(プロフ) - 完結おめでとーーー！！いやあ、最後まで素晴らしかったです…… 結婚式を抜け出すシーンのシャオロンを想像するとイケメン過ぎて惚れてまうやろーーー！！という気持ちでした。シャオロンが更に好きになった作品でした。好きなのでｼｬｵﾁｬﾝのファンやめます。 (2018年1月18日 18時) (レス) id: 611ee581e6 (このIDを非表示/違反報告)
岡崎 響(プロフ) - 甘夏さん» ありがとうございます！そのように言って頂けると本当に励みになり嬉しいです(嬉泣)完結までどうぞお付き合い下さい！ (2018年1月18日 8時) (レス) id: cbd4920d57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
