【d!】虹色の今日を【企画短編】 (ページ12)

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「私、今度結婚するんだ！」
結婚。確かにこの歳になれば自ずと意識させられる。でも、まさかお前に。感情の整理がつかない俺を置いて、Aは話を続ける。
「会社の上司でね、部署は違うんだけどミスして落ち込んでた時に声かけてくれてさ。そこでハンカチ借りたんだけど、そこから話すようになって、付き合い始めてね。この前プロポーズされたんだ。その人、結構奥手な人で仕事帰りに入った居酒屋でプロポーズしてきてさ！本当は計画練ってたらしいんだけど、偶々落としちゃった鞄から箱が見えちゃってね。そこで。」
背を向けたまま話すもんだから、そいつの表情は見えない。でも話し続ける声は段々と詰まっていく。今だ続くそれを遮るように、何かを一緒に吐き出すように、ぎこちなく口を開く。
「雑なお前でも拾ってくれるやつ居たんだな。よかったじゃん。」
俺らの間を風が吹く。散った桜が舞い上がり、それが壁のように感じて缶がメキ、と音を立てた。
「ま、でもおめでとう。式はいつやんの？」
「…まだ決まってないの。プロポーズされたばかりだし、改めてあっちにご挨拶しなきゃいけなくて。でさ、」
そこでようやくこっちに向き直った表情をみて、俺は悟った。
「ひとらんにスピーチ、お願いしたいの。」
「あぁ、任せとけよ。」
言葉裏に隠した本音は互いに見えないふり。そうするしかない。お前はずっと待っていた。俺はずっと待たせていた。何となく分かっていた昔の感情がふつふつと沸いて消えていく。
「俺はお前の幼馴染で親友だからな。」
そう言葉に出してやっと、お前の左手の薬指を見ることができた。

〈ダイヤモンド：純粋無垢、永遠の絆〉