烏の群れに一匹。2nd (ページ3)

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東京遠征の前にページ3

「期末テストあるの、わかるよね？」
その一言で、一部の部員が絶望的な表情になった。

　今回の東京遠征は、音駒を含む、関東数校でできている梟谷学園グループの合同練習試合に、音駒の猫又監督の計らいで烏野高校も参加させてもらう事になった。
　しかし、一つ問題があった。
東京のＩＨ予選は今週末からで、３週に渡り日曜日に行われる為、合同練習は予選の後になるのだが、問題はそこではない。

　「来月になったら、期末テストあるの、わかるよね？」
そう。これが問題なのだ。
「わかるよね？」
期末テストと聞いて、絶望的な表情になった“一部の部員“は、武田から目をそらす。
「⋯⋯⋯⋯⋯」
烏養も何とも言えない表情で黙ってしまった。
「テスト期間は向こうともだいたい一緒らしいので、合同練習はその後という事です」
何故、期末テストが問題なのかというと、
「 ⋯で、予想ついているかもしれないけど、赤点で補習になる教科がある場合⋯⋯⋯」

この時、武田は、教頭がカツラを整えながら云っていた事を思い出した。

　───補習は週末だよ？場合によっては夏休みにも入る。遠征は物理的に無理じゃないかね

　そして、“一部の部員“とは、チームの主力ではあるが、学力面で、かなりまずい日向、影山、田中、西谷の四人の事。四人はそれぞれショックを受け、田中と西谷は脱走を謀ったが縁下に捕まり、日向は「赤点は何点からですか」と近くにいた菅原に訊き、AEDを持ってきた山口曰く、影山は息をしていないという。この状態を一言で表すならば、“カオス”だろう。

　「俺達も部活を続けると言ったからには、それなりの成績を出さないとな」
(菅原先輩は成績良さそう⋯というか、三年生全員成績良さそう⋯)
「赤点はないデショ」
「ないね」
(⋯縁下、流石)
脱走を試みた田中と西谷を捕獲した縁下を見た佐久早は、もし、自分も田中と西谷のようだったら捕獲されるかもしれない⋯と思った。
　「きょ、教頭先生に一生懸命頼めば！」
「まずは一生懸命、赤点を避けなよ」
日向と月島のやり取りを見ていると飽きないなぁ、と思う佐久早だが、何とかして赤点を取らせないよう、勉強を教えようと思ったが、
「⋯教えるの、下手だった」
と、諦めた。

「教頭先生に承諾はもらえても、補習になった場合、そっちが優先だよ」

日向の東京像は、武田の言葉により、音を立てて崩れていった。