10 久し振りの声 ページ10
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仕事だと言い張る裕太くんに、誰かが聞きたくない事を言いだした。
「ってか、この前いた彼女とデートだったんじゃねえの？」
A「えっ……彼女……」
うわぁ、声が出ちゃった。
まずいと思い、自分の手で口をおさえた。
玉森「ねえ、Aの声がしたんだけど」
えっ……
二階堂「電話、繋がってる」
えっ、言わないでよ。
愛美「彼女いるの？」
玉森「いない、ホントいない」
愛美「Aが聞いてると思って、嘘ついたら許さないからね！」
A「別に、いいじゃん、彼女いたって」
裕太くんが可哀相になって、はっきり声を出してしまった。
玉森「いや、ホント……」
そう裕太くんが言いかけた時、私の後ろでチャイムが鳴った。
ピンポーン
あぁぁ……最悪だ。
「え？どこから？」
「Aちゃん？裕太？」
玉森「うちじゃないけど」
出たくない気持ちと、裕太くんの事が気になって、チャイムの事は無視したかった。
だから、静かにしてたのに、もう一度チャイムが鳴った。
ピンポーン
愛美「こんな時間に誰？
Aんち？大丈夫？」
だよね、そう思うよね。
愛美には言ってない。
だって、高校の時の友達には、印象が悪い彼氏だから。
A「うん、大丈夫。
ごめん、またね……」
愛美「明日も仕事だよね」
A「……うん」
愛美「変な男に引っかかってんじゃないよ！」
さっき、泣き顔だったの心配してくれてるんだ。
A「ありがと、じゃあ、みんなもまたね」
切ろうと思ったら、三回目のチャイムが鳴った。
みんなも、エッていう顔になってる。
A「おやすみなさい」
「待って……」
優しい声で呼び止められた。
玉森「A、元気でね。
仕事、応援してるから」
A「うん、ありがとう。
おやすみなさい」
玉森「おやすみ……」
あの頃みたいだった。
あの頃みたいに、おやすみを言い合った。
その間、誰も声を出さずに、二人だけの空間になった。
後ろ髪を引かれる思いで、こっちから電話を切った。
そしてすぐに四回目のチャイムが鳴った。
仕方なく重い腰を上げ、玄関に向かい、ドアに向かって返事をした。
A「……はい」
有岡「ちょっといい？」
A「何？」
有岡「入れて」
A「えっ、無理…」
有岡「俺の枕……」
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2020年3月16日 19時
