24 カレー ページ24
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私は、気づかなかったふりをしたのに、向こうが話しかけてきた。
有岡「仕事、早番？」
A「……休み」
有岡「そっか、休みだったんだ」
それ以上話す事もないし、無言で歩きだし、いつもよりスピードをあげて階段をのぼった。
それなのに、玄関のドアノブをつかんだタイミングで、向こうも同じ格好をしてこっちを見ているのが分かった。
有岡「カレー？」
A「……そう」
廊下にも匂いが広がってるんだ。
有岡「いいなー、Aのカレー、美味いんだよなー」
A「別に、市販のルーだけど？」
ドアのノブを引くと、大貴がこっちに歩いてきた。
有岡「食べたい」
A「大……いや、有岡の分はない」
有岡「あっ……えっと、最後だし、ダメ？」
面倒臭くなって
A「待ってて」
そう告げ、中に入った。
いつも大貴が使ってた大皿を出し、私の分のご飯をよそって、ルーをかける。
お皿にラップをかけ、玄関のドアを勢いよく開けた。
うちのドアの横でスーツ姿で立っていた。
A「はい……もうお皿いらないから、返さなくていいから」
手をゆっくり伸ばすと、私からしぶしぶお皿を受け取った。
有岡「一緒に食うんじゃないんだ」
A「いらないなら、いい！」
有岡「いや、いるよ。
いただきます」
A「じゃあ……」
すぐに扉を閉めた。
寂しそうな顔がドアの隙間から見えたけど関係ない。
私の大切な一食分の夕飯を分けてあげたんだから、ありがたく思ってほしい。
私も冷凍庫から冷凍ご飯を出し電子レンジで温めた。
福神漬けをお皿にだし、サラダもよそって、テーブルにつく。
A「いただきます」
やっぱり、普通のカレーだ。
別に美味しいとかない。
まだやる事も残ってるから、黙々と食べ、最後にお茶を飲んだ。
A「ごちそうさまでした」
有岡と食べてたら、きっともっと時間がかかったと思うから、断って正解だった。
それに、洗い物も二人分やらされそうだし、冷たくしたのは間違ってなかった。
つい最近まで好きだったのに、どんどん気持ちが離れてるのが分かった。
洗い物を終え、布きんを洗っていると、スマホの着信音が鳴った。
LINEだ。
愛美かなと思ったけど、確認したら有岡だった。
なんだろ。
日曜日にお別れしてから初LINE。
有岡『やっぱ美味かった。
ごちそうさま』
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2020年3月16日 19時
