3 雑用係の怪我 ページ3
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有岡「いやー、アヤちゃんが洗ってくれたんだけど、手が滑ったって。
俺やるよって言ったんだけどさ、そういうとこ気が利くっていうか」
そういうのを、気が利くって言うの？
A「で？」
有岡「どうやって捨てたらいいのかなって」
A「アヤちゃんって、地元どこなの？」
有岡「え、市内……」
A「市内だったら、ゴミの出し方は同じじゃないの？」
有岡「いや、危ないからさ、怪我したら大変じゃん」
私は怪我してもいいんだ。
どんどん性格が悪くなっていく。
でもね、この感覚、高校の頃と同じなんだよね。
違うのは、私が強くなってるって事。
二人の男に捨てられて、こんな遠くまで来てるって事。
無言でパソコンのプリンターからA4の用紙を二枚出した。
うちに戻れば新聞紙はあったけど、面倒臭いからそれでいい。
そして、大貴が私の事を見てないすきに、とがったガラスの先端で、自分の腕をスッて切った。
A「痛っ！」
有岡「えっ！？嘘っ！」
すぐに私に駆け寄ってきた。
有岡「え、どうしよっ。
血が出てるじゃん！」
A「大丈夫……」
泣きそうな顔で私の腕をティッシュで押さえてる。
血が止まったかどうか、のぞいては押さえてを繰り返している。
そう、私は血を出さないと大貴を味方につけられないんだって。
最低な女だし、最悪な状況だし。
自分の仕事に支障をきたさないように、手は傷つけなかった。
手のひらとヒジの間あたりを、浅い傷が5cmくらい出来ただけ。
すぐに血は止まった。
有岡「絆創膏する？」
A「私の部屋の救急箱持ってきて」
有岡「待ってて！」
こんなとこに、どうやって傷が出来たんだろうとか思わないんだ。
優しいっていうか、なんていうか……
ソファーの洗濯物を片側に寄せて、座って待っていた。
救急箱からガーゼを出し、傷の大きさに切ってくれて。
紙テープでとめてくれた。
A「ありがとう」
有岡「ごめんな、俺がやるんだったな」
A「私、雑用係だからね。
手首の内側じゃなくて、良かったよね」
有岡「えっ……」
嘘だよ……
A「あとは？」
有岡「いや、洗濯物とか、キッチンのものとか……」
A「分かった……」
大貴をだましたお詫びに、大貴の友達が汚した部屋を、一つ一つ片付ける事にした。
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2020年3月16日 19時
