39 Daiki side ページ39
Daiki side
A「大ちゃん･････ごめんなさい。
あの･････････」
まだ泣いてるみたいだった。
俺もなんて言っていいか、わからなくて。
だって、俺が一番見たくなかったモノだったから。
だから、俺自身を落ち着かせる為に、一つだけ質問した。
有岡「ねえ、俺の事･･･好き？」
･
A「うん、好き･･･」
･
有岡「よかった･･･」
そして、さっきあいつがつかんでた、Aちゃんの手首を、ギュッとつかんだ。
あいつの残した痛みを消すために。
･
きっと痛かったと思う。
ちょっと、首をすくめてたから。
罰を受けてるみたいな顔をして、下唇を、ギュって噛んでた。
ちゃんと耐えてたから、ご褒美にキスをした。
もちろん、深いやつ。
途中でしょっぱい味がして、
それが俺から出たものか、Aちゃんから出たのかわからなかったけど。
こんな辛いキス･･････悲しいだけだね。
･
体を離して、「ごめん･･･」と告げ、俺の持ってたハンカチで、
自分の涙を拭いてから、Aちゃんの涙も拭いた。
メガネをかけてあげ、
有岡「課長、行きましょうか」
営業カバンを渡し、重い扉をゆっくりと開け、現実の世界に戻った。
受付で来客用のバッチを返し、山田総合地所を出た。
有岡「課長、俺、次があるんで行きますね」
A「はい、気をつけて」
小さな声でそう言われたので、180°向きを変えて歩き出した。
行く宛もないけど、
とりあえず、逆方向に進んだ。
･
あいつが言ってた事、Aちゃんはどう思ってんの？
伊野尾さん達が言ってた事が本当なら、
赤ちゃんが出来てなかったら、別れるつもりなんてなかったって事だよね。
･
あいつのせいで、髪をバッサリ切って
仕事も変えて、
真面目に一生懸命働いて来たんだよね。
その変わり様から、どんだけあいつの事が好きだったか、わかるよ。
すげー好きだったんだろ。
今まで、誰とも付き合わなかったのって、まだ気持ちがあるからじゃ、ねえよな。
俺の気持ち、まだちゃんと受け取ってくれないのも、そのせい？
・
色んな気持ちが、頭ん中ぐるぐる回ってる。
後ろからカツカツ音が近づいてきて、何かが、俺に、ドンッてぶつかった。
･
「大ちゃん」
･
・
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2017年1月6日 20時
