49 Daiki 北海道に出発の日 ページ49
Daiki
あれから一週間。
あっという間に引越しの日になった。
大学に行ったり、友達と飲んで帰ってきたり、なんだか忙しそうで。
ベランダからAの部屋を覗いても、全然気配を感じなかった。
明日からは、ずっとそうなんだと思うと、やっぱり寂しい。
母ちゃん経由で、飛行機の時間は分かっていた。
逆算して家を出る時間を狙い、いつもの様に、門の所に座って待っていた。
玄関が騒がしくなった。
特におばさんの声がする。
ドアがガタンと開くと、Aとおばさんが出てきた。
A母「ホントに大丈夫？」
A「大丈夫だって。
じゃあ行ってくるね。
お母さんも少しの間一人だから、気をつけてよ」
A母「うん、じゃあまたお父さんの引越しの時ね！」
A「うん。
行ってきます」
アヒルみたいな口で泣きそうなのを我慢してる横顔が見えた。
有岡「おはよ」
A「びっくりした」
有岡「空港まで送ってくよ」
A「大丈夫、一人で行ける。
じゃあ、行ってきます」
有岡「待てよ。
いいじゃん、別に」
右手で引いているスーツケースを、ガシッと掴んだ。
A「やめてよ･･･ホント、離して！」
A母「A、大ちゃんに甘えさせてもらったら？」
A「イヤ！ダメなの･･･」
A母「なんでよ」
A「なんでも！」
すごい力でスーツケースを奪い返そうとしてるから。
有岡「あいつが関係してる？」
パッと俺の顔を見て、手の力を緩めた。
すごく悲しい顔をして
A「･･･関係ない」
A母「大ちゃん、よろしくね！」
口では関係ないと言っておきながら、顔には関係あるって書いてあって。
やっぱりまだ、引きずってるんだ。
呆然と立ちすくんでる間に、駐車場から車を出し。
トランクにスーツケースを入れ、
有岡「どうぞ」
視点を合わさず「こっちでいい･･･」と小さく呟き、
助手席の後ろの席に座った。
A母「いってらっしゃい」
A「いってきます……」
有岡「いってきます」
A母「大ちゃん、お願いします」
有岡「はい」
俺の返事で出発をした。
キノコ公園の手前で窓を閉め、二人だけの空間になった。
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年5月12日 17時
