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35 大学四年 クリスマス ページ35






お財布からお金を取り出そうとしたまま、キョトンとしているから、小さい声で「閉店までだから」と告げた。


聞こえたみたいで、頭で「うん」と返事をして、お店から出ていった。






トイレに行き、お母さんに夕飯がいらなくなったとメールをしようと思ったら、逆にお母さんからメールが来ていた。




なんだろ。

お母さんもお出掛けになっちゃったのかな?






母『お父さんから連絡があって、転勤が決まったそうです。

  転勤先は東京本社。

  来年の四月からです。

  そういう事だから、そのつもりで』







恐れてた事が起きたか。

そんな先の転勤を、もう教えてくれるなんて、良心的な会社だよな・・・なんて変な事を思ってしまって。

受け入れないといけない事を後回しにして、夕飯がいらない旨の返信をして職場に戻った。













そっか、そうだよね。

私が高校一年の時からだから、もう七年も行ってたんだ。

最後は採用地で働けるように、会社もしてくれるんだ。

お母さんと水入らずで、仲良く過ごしてもらえればそれでいいかな・・・





そんな事を考えながら、バイトの時間が終わった。












昔も待ち合わせてた、従業員入口のそばにある、ベンチしかない公園に裕太くんはいた。






A「お待たせ」





玉森「ごめんね、急に」





A「ううん、どうせ暇だし。

  どこ行く?」





玉森「あっちのファミレスでいい?

  ホントはどっか素敵なレストランとかがいいのかもしれないけど、Aに気を使わせたくないし」






A「うん、いいよ、ファミレスで」





裕太くんは色々考えちゃうとこあるから。

友達としてだったら、ファミレスの方が気を使わない。






クリスマスイブの夜は、なんだか街も落ち着かない。

ギュッとくっついているカップルを見ると、懐かしく思う。

今日の私たちは、もちろん微妙な距離を保ち、





玉森「寒いね」




A「うん、寒い」






このひとことだけしか喋らないで、ファミレスに着いた。

あまり喋らない裕太くんの日常で、特に気にはしてない。




九時半だというのに、まあまあの賑わいを見せ、20分くらい待ち、案内された。





玉森「これにしない?クリスマス限定メニュー」





A「サーロインステーキ?」





玉森「俺、おごるよ。

  バイト代の使い道に困ってるし」






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作者名:やまぱん | 作成日時:2019年5月12日 17時

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