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ピアノの練習をしても、起きない。

まあ、いいんだけど。




麦茶を飲むためにキッチンに移動したら、軽快な音楽が鳴り始めた。

有岡のスマホだ。

あんな近くで鳴ってるのに、びくともしない。




A「ねえ、携帯鳴ってる」




大きな声をだしても動かないから、少し近づいたら、軽快な音楽が鳴り止んだ。

え、どうしよう。

起こしてあげようかな。





でも、なんだか起こしたくなくて。

どこかに行かれたら寂しいから。

知らないふりをした。





キッチンに戻り麦茶を飲んでたら、再び音楽が鳴り始めた。

さすがに、ダメだよね。





A「有岡、起きて。

  携帯、鳴ってる」





今度はちゃんとソファーの前まで行き、体を揺すって起こした。

すぐに目を覚まし、スマホの画面を見てから電話に出た。





有岡「もしもし……うん、うん……え?16:55?

  ちょっと待って……メモって」





A「え?私?」



うんうんとうなずき、また話を続けた。

16:55と……




有岡「18:30着……分かった。

  うん、大丈夫だって、じゃあな」













有岡のデートの時間をメモるなんて。

ちょっとイヤな気持ちになった。





有岡「三時か……まだだな。

  四時半になったら起こして」





A「……うん」




あと一時間半しかいられないのかと思ったら、寂しくなって、寝っ転がってる有岡のTシャツの裾をつかんでいた。

そんな事したって、行ってしまうのに。





私がソファーの前からどかないせいか、パッと目をあけ、目だけが足元の方を見ている。






有岡「どうした?

  アイツのことでも、思い出しちゃった?」






そう、有岡がいなくなると、裕太くんの事を考えてしまうのが怖くて。

一人になりたくなかった。





有岡「Aも一緒に行く?

  いや、明日から実習で、まだやる事あるといけないと思って。

  もし大丈夫なら、一緒に行こうよ」






A「え、何言ってんの。

  有岡のデートについていくほど、バカじゃないよ」





と、突然ケラケラと笑いだし、上半身を起こした。





有岡「残念でした。

  俺だってデートに幼馴染連れてくほどバカじゃないです。

  母ちゃんとおばさんを、成田空港まで迎えに行くの!

  きっと、帰りはどっかでメシ食うと思うし」











あ、え?

お母さん達?





安心した反面、ちょっと傷ついた自分がいた。

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作者名:やまぱん | 作成日時:2019年5月12日 17時

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