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42 Yuta 最後のデート ページ42

Yuta




それなのに、知らぬ間に帰ってきてて。

そういうところが彼氏じゃないんだなって思った。




三月一日に引越すと決めたらしい。

大学の卒業式は出ないで、学位記をもらえるように手続きをしたみたい。

お遊戯会や卒園式のお手伝いが入ったみたいで、すでに先生見習いが始まるんだって。





そして、一日だけ俺に時間をくれるらしい。

海とディズニーに行きたいって言われて。

あまり興奮とかしない俺だけど、初デートの時みたいに、緊張していた。






車で迎えに行くと、すでに門の前に立っていた。

寒いんだからいいのにって思って。

あの頃のようにニコニコと助手席に入ってきた。





玉森「お待たせ」




A「ううん、デート久しぶりで緊張してる」





玉森「俺も。

  あの海でいい?」





A「うん、お弁当作ってきた」





玉森「あ、うん…」





俺の笑顔に誘われて、Aも笑顔だ。

北海道での話を、色々してくれた。

家族三人で、色んな物件見てきたらしい。






A「裕太くんちみたいに、家族みんなが仲いいの、憧れてたんだ。

  思春期はさ、お父さんもお母さんも嫌いだった。

  お父さんはいつも家にいないし、どう話せばいいか分からなかったし。

  最近、やっと少し話せるようになったんだよね」






玉森「うん……」






A「だから、裕太くんのせいじゃないから」





素直に「うん」とは言えなかった。

遠くに行きたいって思ったのは、俺に会いたくなかったのは知ってるから。

少し沈黙が続いたのは、Aの優しさを受け止める時間で。

そんな事を言わせてしまった、俺が反省する時間でもあった。












A「久しぶりだね」





一宮の海に着いた。

冬の海は、空も海もグレーで。

ワクワクする感じはないけど、Aはとても嬉しそうだった。





玉森「外、出る?」




A「うん」





Aに返されたストールを肩にかけてあげると、微笑みながら前を抑えている。

車の前に立ち、遠くを見ていた。

その後目を閉じ、波の音を聞いてるようだ。

パッと目を開け、





A「サーフィン、またやって」





玉森「え……」





まだまだそんな気持ちになれない。

もしかして、それを言う為に海に来た?

海岸線に近づき、いつものように貝殻とシーグラスを拾っている。

今日の思い出を、持ち帰ってくれるんだ。






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作者名:やまぱん | 作成日時:2019年5月12日 17時

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