32 Daiki お弁当 ページ32
Daiki
大きめの弁当箱には、キレイに玉子が巻かれたオムライスと、唐揚げと、ソーセージが入っていた。
小さめの方には、ウサギの形のりんごと苺が入っていた。
Aの気にしてる“野菜”は、スープポットの中のおみそ汁にいっぱい入っていて。
あとは、姿がそのままのミカンが二つ。
久し振りに、心臓がキュンッてした気がする。
高校の時にも、弁当を作ってくれたのを思い出した。
あの時の唐揚げは冷凍食品だったけど、これはちゃんと作ったやつで。
おばさん経由で、裕太くんが唐揚げが好きだって聞いてたし。
我慢出来ずに、指で唐揚げをつまんで、口に入れた。
有岡「美味っ！」
好きな人の為に覚えた料理……
やっぱり嫉妬する。
でも、俺の為に作ってくれたオムライスもあるから。
ウサギ型のリンゴをシャキッと食べて、一旦、蓋をした。
家事をしてから食べるのを、楽しみにして。
・
翌日から、またAは研修が始まって。
俺は、仕事用のワイシャツなどの買い足しをした。
その帰りに、ふと思い立って、Aの勤務先の保育園に行ってみることにした。
名前だけ聞いてたから、スマホで調べて、電車に乗って駅から歩いてみた。
うちから乗り継ぎがよければ、ドアtoドアで20分。
乗り継ぎが悪いと30分だと言っていた。
有岡「あっ……」
園庭には雪が残り、土が見えてる所はドロドロしてる。
送り迎え用の駐車場はキレイに雪かきがされてて、Aがやったのかなーとか思ってしまった。
門が閉まっているその中を、立ち止まって見上げた。
二階建ての建物で、どこも窓がしまっていた。
外には全然音が漏れて来ないし、中の様子は分からないけど。
朝も早くから、ここで頑張ってるんだって思うだけで、胸が熱くなる。
だって、一人で、ここ札幌で生きて行こうなんて思ってたんだから。
男が保育園を見てるとか、変質者だと思われかねないから。
その雰囲気だけを胸にしまって、その場から離れる事にした。
・
・
今週から、夕飯はそれぞれにしようと言われて。
一人でコンビニめしを食べ、ゲームをしたり映画を観たりしていた。
・
昨日の夜、Aから電話があって、おばさんが来る飛行機を伝えられた。
こっちに来る前日、おばさんに「Aの事好きで、そばにいたいから札幌に行きます」と伝えた時に、かなり動揺させたから、どんな顔で会えばいいのか、分からない。
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年5月27日 23時
