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マグカップをテーブルに置き、キッチンに入った有岡を覗きに行った。
ここのマンションは、キッチンと部屋の間に、等間隔に板で仕切られている。
その端っこの板のところから、中を覗き込んだ。
有岡「ベッドのカエル。
名札付けてたやつ、大切なの？」
A「この前のクリスマスにもらったの。
保育園で使えそうでしょ？
可愛いし」
有岡「可愛いか？」
A「うん、口をパクパク出来るんだよ」
有岡「あいつ、心配して家まで来てたぞ」
A「え……」
有岡「Aがこっちに来る日、駅で待ってたんだって。
で、来ないから、家まで来たって」
A「お母さん、何にも言ってなかった」
有岡「俺と話しただけ」
A「もしかして……」
有岡「言ってねえよ。
俺が車で送って行ったなんて、言えねえだろ」
A「よかったー」
有岡「そんな知られたくないわけ？」
A「うん、裕太くんには知られたくない」
有岡「追いかけねえのかよって聞いたら、もう終わってるしなんて言ってた。
そんなやつ、もういいだろ、忘れろよ」
A「忘れようとはしてるけど。
今まで、ずっと一緒にいたんだし、すぐには忘れられない」
洗い物が終わったようで、タオルで手を拭きだした。
そして、私に近づいてきて、
A「キャッ！
ちょっと、やだ、離れてよ」
抱きつかれた。
両腕が私の首回りに、巻き付いている。
その腕の中から抜け出そうと思ったけど、左耳に感じる有岡の温かい息づかいに、力をなくした。
有岡「忘れられないとか言ってさ、
二月のデートの後、あいつの前で俺にこんな風に抱きついてきたじゃん。
どうしてそんな意地悪するの」
A「裕太くんに、私の事忘れて欲しいって思ったから。
大貴って呼んだだけで、悲しい顔してたから、とどめ刺したかった」
有岡「そんなショック受けるような事、しなくてもいいだろ。
あいつ、可哀相じゃん」
A「あの日、付き合ってた頃を思い出させるような事があって。
だから、ちゃんとしたかった」
有岡「抱かれた？」
ビックリして有岡から離れた。
そして、二人掛けのソファーに座った。
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年5月27日 23時
