49 Daiki ページ49
Daiki
強引に腕を引かれて、改札の中に入った。
あの二人は、俺らの事をずっと見てたっぽい。
振り返ったら、まだこっちを見てたから。
女「あの二人、カッコ良かったね。
背も高いし、いい人って感じした」
有岡「じゃあ、チビの腕、離してくんない？」
到着した電車に乗り込んで腕をはがし、席に座らせた。
俺は、ドアの前に立ち、外の暗い景色を見てた。
A‥‥
早く戻って、誤解を解きたい。
窓ガラスに映る自分の姿を見て、ワイシャツのボタンを一つ閉めた。
俺の言い訳、信じてくれるかな。
景色を通り抜ける窓から、大型スーパーが見えた。
去年、母ちゃん達がいなかった時、一緒にスーパーに行った事を思い出した。
アイスを食べて、あっ、あいつにそこでも会ったっけ。
そうそう、塾に行くって言ってたな。
俺とAにとって、忘れられない日々だったから。
一年後に、こんな事になってしまったなんて、誰が予想しただろう。
いや、最近、色々あって……
Aを傷つけている。
A……ホント、ごめん。
胸が熱くなり、キスマークをつけられた辺りのシャツをグッとつかんだ。
Aの気持ちを考えると、消えたくなる。
とりあえず、早く帰りたい‥‥それだけだった。
・
地元に戻って来たのは、0時ちょっと前。
いつもと同じくらいだ。
すっかり雨がやみ、日中の熱が、一気に下がっている。
街灯の光が水たまりに落ち、眩しい。
涼しくなったとはいえ、ムシムシベタベタして気持ち悪くて。
家で、Tシャツとハーフパンツに着替え、携帯とAんちの鍵を持ち、Aんちのチャイムを鳴らした。
・
一階は電気がついてないみたいで。
二階の様子は玄関からは分からない。
三分は待ったけど出てくる様子もなく、かなり罪の意識があるけど、鍵を開けた。
カチャン……
内鍵がかかってたら入れないから、ゆっくりドアノブを引く。
・
内鍵はかかってなくて、小さな声で「お邪魔します」と声をかけ、二階のAの部屋を目指す。
玄関の電気、階段の電気をつけ、怪しさを軽減する。
そして、ここまで静かに来てしまったから、急に声をかけたらビックリされると思って。
どうしようどうしようと思いながらも、小さくノックをして声をかけた。
トントンッ
有岡「A……起きてる？」
・
・
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年3月13日 22時
