48 Daiki ページ48
Daiki
Aに会うとは思ってなかった。
塾があるのは知ってたけど、中学の頃行ってた塾と違うんだって初めて知って。
そして、胸元は見えないと思ってたのに、見えちゃったんだって、すごく焦ってる。
女「ねえ、今の誰？」
屋根の下に入ったので、ビニル傘を閉じパタパタと水を払ってると、ほぼ無傷のこいつに面白がられた。
有岡「あぁ、彼女……」
女「えー、大丈夫？」
有岡「知るかよ」
全然心配してないだろ。
ニヤニヤして、俺とAの仲が壊れればいいとか思ってるんだろ。
だいたい、うちの傘が、この一本しかないってどうなってるんだよ。
多分、俺だけどな。
学校に持って行って、どうしたっけ？
傘を閉じるのに、ビタビタになった手を、仕方なく制服のズボンでふいた。
制服も、そうとう濡れてるけど。
きっとAだったら、タオルを出して拭いてくれるだろう。
それに、Aとなら肩を抱いて、もっと密着するからこんなに濡れないし。
それなのにこいつは、携帯を開いて、誰かにメールしてるし。
俺が改札に向かって歩き出すと、俺の腕に手を絡めてきた。
睨んだのに、お構いなし。
そして、俺の胸元をのぞきこんでる。
はーーっ
溜息しか出ない。
・
「おいっ、待てよ」
俺を呼んでると思ってなかった声の主が、俺の肩をぐいっと引っ張った。
「待てって」
顔を見たらあいつだった。
Aの学校のあいつ。
「よっ、久し振り」
隣りから声をかけてきたのは、伊野尾だった。
有岡「おぉ…」
玉森「今、Aちゃんに会わなかった？」
有岡「会った」
伊野尾「大きな声出したの、A？」
有岡「そっ」
玉森「何してんだよ」
有岡「こいつ、送ってく」
玉森「よく平気だな。
彼女に見られてさ」
有岡「仕方ねえだろ」
伊野尾「相変わらず、Aを傷つけてんだ。
モテモテですからね、有岡くんは」
あー、面倒くせ。
女「大ちゃんの友達？」
玉森「違う！」
伊野尾「友達だった？」
玉森「そんなにボタンあけてさ、何考えてんだよ」
伊野尾「こいつ、Aを傷つけるのは昔っからだから。
どうしてこんなやつ好きなのか分かんねえわ」
友達だと思ってた伊野尾にも、こんな風に言われて。
女「ねえ、帰ろ！」
・
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年3月13日 22時
