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即座に大貴の胸を押し、腕の中から出ていた。
「嫌っ…」って思ったから。
大貴の言葉にショックを受けたから。
有岡「なんだよ、どうした……」
A「違う人の匂いは落ち着かなかった？」
有岡「なんだよ。
いちいち突っかかるの、すげー面倒」
口を尖らせている。
目も、キラキラ可愛いまん丸の目じゃない。
私を睨んで、怒りに満ちている。
何て話だそうって必死に考えた。
こんなしょっぱなから、大貴を拒否しちゃうとは思ってなかったから。
もっと、こう‥‥「昨日はごめんね」とか「ゆっくり話したかったよ」とか。
なんなら「勉強教えてー」でも良かった。
きっと、私にはもう勉強の事は聞いてこないか……
私の教え方、否定したんだから。
立ちすくんでいる私の横を通り、大貴はベッドの上にドシンと座った。
有岡「何？俺の事、嫌いになった？」
嫌な雰囲気のひと言に、焦って振り返り、大貴の目を見た。
私の悲しい感情を察知してか、大貴の表情がだんだん柔らかくなっていき、手招きをした。
有岡「ほらっ、こっち……」
自分の隣りをポンポンと軽く叩いた。
そういうとこ……
そういう風に、包み込むような声と顔……
柔らかい表情で私を受け入れるの……ズルい。
一歩……二歩……大貴に近づいたら、腕をつかまれて、優しく隣りに座らせてくれる。
やっぱり大貴が好き。
私の体の右側に、久し振りに大貴の体温を感じる。
不安で不安で仕方なかった気持ちが、徐々に緩んでいくのが分かった。
私って単純だなって思った瞬間、再び心臓をギューってつかまれた。
有岡「アヤちゃんに嫌われちゃったし、Aしかいないかなって。
アヤちゃんと二人だと、緊張しちゃってさ。
本当の俺が、あんま出ないっていうか。
それでも頼りにしてくれるから、必死に頑張ってたけど。
やっぱAが落ち着くー」
A「何それ…
その子にフラれたから、私のとこに来たみたいじゃん」
声を荒げてしまった。
有岡「フラれるって、付き合ってたわけじゃねえんだから、そういうんじゃねえだろ」
A「大貴さ、緊張って、好きだから緊張してたんじゃない？
胸がドキドキして、二人っきりでどうしていいか分からないって、好きって事だよ」
有岡「え……でも」
見上げた大貴の顔は動揺してた。
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年3月13日 22時
