3 Daiki ページ3
Daiki
おばさんは、キッチンの方から「どうぞ」って言っている。
Aは、小さく「行こ」って告げ、先に階段を上がった。
慌てて「お邪魔します」とおばさんに聞こえるように言い、Aの後を追った。
うなじを久しぶりに見るかもしれない。
そのキレイなうなじと、香りに誘われて、じーっと見上げていた。
華奢な首筋が色っぽくて。
守るべき大切な彼女であることを、再確認した。
A「暑い？寒いかな…」
部屋に入って、窓を開けようかどうしようか悩んでるみたいで。
有岡「大切な話だから、閉めといて」
俺自身は、もう変な汗出てるから、暑いんだけど。
Aも、お風呂上りは外の風を感じたいのかもしれないけど。
我慢できない暑さじゃないから、そのまま閉めておいてもらった。
A「ねえ、新しいの聴いた？」
先週発売した、ミスチルの新譜のジャケットを俺に見せた。
そして中からCDを出し、流し始めた。
A「座って…」
有岡「あのさ…」
時々ある、喋りだしが かぶっちゃうやつ。
二人の目が合い、黙った。
数秒の沈黙を、もちろん俺が破った。
有岡「A、ごめん！
ホント、ごめん！
誕生日……忘れてた」
俺から視線を外し、口角を上げながら、話しだした。
A「ううん、大丈夫…‥」
目が笑ってないのは一目瞭然で、全然大丈夫じゃないのもすぐ分かる。
有岡「俺、最低だよな。
Aの誕生日なんて、すげー昔から知ってるのにさ。
それに気づいたのが、母ちゃんの口からだなんて。
せめて、メールがこない原因を考えてたんだから、思い出すんだった」
A「なんだ……自分で思い出してくれたんじゃないんだ」
有岡「あ……ごめん」
A「ホントは、私から『もうすぐ誕生日なんだけど会える？』とか『ちゃんと覚えてるよね』とか言えばよかったんだよね。
サプライズかなとか、知らないふりしてるのかななんて期待しちゃって。
図々しかった……
大貴、忙しいんだから、ちゃんと自分からアピールすべきだったね。
ごめんね……」
有岡「そうじゃねえだろ。
『なんで忘れんのよ』って怒れよ。
『最低』って言えよ。
なんでそんな、遠慮してんだよ。
俺ら、恋人同士なんだからさ、もう少し心、開こうよ」
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年3月13日 22時
