19 ゴールデンウィーク ページ19
・
聞かせたくないっぽい。
メインを食べ終わって、あとは飲み放題で もう少し話したいなって思って。
A「ちょっとトイレ行ってくる」
有岡「あぁ…」
・
席に戻ろうとしたら、えっ…て思うものが目に入ってきた。
大貴の後ろにあったトイレ…
戻ってくる時に、大貴の後頭部越しに、携帯の画面が見えた。
【Re:】が入りきらないくらい並んだ「件名」に
ハートマークが、いたるところに散りばめてある「本文」
・
えっ・・・・誰・・・・
そう思ったけど、足が止まらず。
脳内で、見なかった事として処理された。
A「お待たせ……」
大貴の目の前に座ったら、慌てて携帯を閉じ、私の視界から消えた。
有岡「おぉ、そろそろ帰るか…」
A「え、まだ八時半だよ」
有岡「え、あ、そうだな。
ごめん、テレビ、見たいの予約してくんの忘れちゃって」
A「おばさんに頼んだら？」
有岡「いや、母ちゃん、そういうの出来ねえんだわ」
A「じゃあ、うちのお母さんに頼んであげるよ」
有岡「え、いや……自分でやるから」
・
早くメールの返信をしたいんだって思って。
だから、諦めた。
A「分かった……じゃあ、帰ろ」
・
ホント、怪しい。
鼻の穴、ピクピクしてるし。
頭を振って、前髪を整える仕草を頻回にしてて落ち着かない。
聞くタイミングは、席に着く時だったなって後悔してる。
ふざけて「何、そのメール」とか聞けばよかったなって。
今さら「見えちゃったんだけど」とか言えない。
それぞれ自転車で、あっという間に家の前に着いた。
有岡「じゃあ、またな」
A「うん」
いつもだったら、自転車のハンドルを握ったまま、軽くお別れのキスをするのに。
すでに自分ちの駐輪場所に、自転車を突っ込んでいる。
そして、私が玄関に入る前に、もう姿がなかった。
テレビの予約を急いでたと言われたら、そう見える。
・
心臓が痛い。
心臓が苦しい。
今までだって、女の子関係で悲しい気持ちになった事、何度もあった。
それとは全然比べ物にならないくらい、苦しい。
お風呂に入ってても、
冷蔵庫を開ける時も、
階段を上がる時も、
ずっとずっと悲しい。
自分の部屋の窓を開け、習慣づいてる右側に目をやった。
カーテンの隙間から明かりが漏れている。
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年3月13日 22時
