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有岡を押しのけて、うちまで走った。



ほんの数メートル、全速力で。






A「ただいまっ」





母「伊野尾くんたちに渡せた?」





A「うん」





母「大ちゃんは?」





A「あとで・・・」






部屋に入って、ランドセルを置いた。




有岡が言ってた事を理解できなくて。









お前って私の事なのか?


チューってキスの事なのか?











私にも彼氏つくれば?みたいな事言っといて、何なのよ。




表面ではそんな有岡にイライラしてるのに、胸の奥の方ではドキドキしてた。





すでに、彩ちゃんとチューくらいしてるんじゃないかと思ってたから、さっき言った事が本当なら『よかった・・』って思うし。


彼女がいるのに変な事言ってたし。




もーーー、なんなのよ!











ベッドに寝転がってたら一時間くらい寝ちゃってて。



時計を見たら、そろそろ五時になるし。

彩ちゃんが出てくる前に、ポストに入れとこって思って。





実は、伊野尾くんたちのより、倍の量を用意してて。

なんかムカついたので、大きく油性ペンで「義理」って書いてやった。

それを、雑にポストに入れて、『割れたな・・』って確認できたし、うちに戻った。












心を落ち着かせるために、ピアノの練習をした。

有岡んちまで聞こえるというピアノで、邪魔したいとも思ったし。






20分くらい練習した頃、インターフォンが鳴り、有岡のお母さんだと分かった。



いつものようにダイニングテーブルの上に何かを置いた。





有岡母「Aちゃん、大貴にサブレ、ありがとね。

  学校でお礼は言うと思うけど」





A「いえ・・・」





私の返事をろくに聞かず、お母さんと話し出した。










有岡母「毎年手伝ってもらって、ごめんねー」




そう言った瞬間、何を持ってきたのか分かった。

この家族は、どういうつもりなんだろっていつも思うやつ。

それを受け取るうちの親も、どうかしてる。





母「あ、これ手作りのチョコケーキじゃない」




有岡母「そうなの。大貴の彼女が作ったんだって」




母「大ちゃん、食べきれないの?」





有岡母「んー、ここだけの話だけど、いらないって言うのよ」





母「え、そうなの?

  A!いただく?」






ピアノを片付けながら、そのチョコケーキを確認しないで答えた。





A「まずそうだから、いらない」










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作者名:やまぱん | 作成日時:2018年8月29日 23時

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