3 Daiki ページ3
Daiki
有岡「そうなんだ・・・」
先生「では・・・」
そう言って、その他の先生や看護師さんと一緒に、Aを運んで行ってしまった。
桃ちゃんを運んできた助産師さんに
助産師「今日はもう、大丈夫ですので、また明日の面会時間に・・」
なんだよ、一緒にいられねえのかよ！
お義母さんとお義父さんは、帰る支度を始めた。
義母「大ちゃん、うちに泊まってく？」
有岡「いえ、洗濯とかしたいんで、うちに帰ります。
あの、ちょっとAに頼まれてた事があるんで、それやってから帰るんで」
義母「そうなのね。
じゃあ、お先に失礼するわ」
有岡「また、明日面会時間に来ます」
義母「あら、お仕事はお休みなの？」
有岡「休みます。
では、また・・・
今日はありがとうございました。
気を付けて」
そう言って、そこで別れた。
Aを連れてきた人たちも、ほぼいなくなった。
・
さっき消灯を知らせるアナウンスが流れた。
だから、病室内は暗くなっている。
俺の顔を見て、「どうしました？」と言ってくれた看護師さんに「忘れ物を」と告げ、Aがいるであろうカーテンをそっと開けた。
入ってすぐ左側のベッド。
壁際で、外の光も入らないようなところ。
さっきと同じように、まったく動かない。
そっと近づき、顔を覗き込んでみた。
深いところに、行ってしまったような、そんな寝顔が、俺を不安にさせた。
おでこに手を当ててみる。
ちょっと冷たい気もする。
布団を少しはがし、手を探す。
桃ちゃんが足に付けてたのと同じバンドがついた右手を、そっと握ってみた。
もちろん、握り返されないけど。
でもね、さっき、桃ちゃんに指を握られて思い出したことがあって。
初めて、誰かに触れる時って、すげー緊張するよなって。
今は、普通に握っているこの手を、初めて握った時の事を思い出したわけ。
・
この人を守りたいって。
・
今日は、大変な決断をする時に、そばにいてやれなかったから。
ホントにゴメンね。
口にチューをしたかったけど、酸素のマスクをつけられてて無理だから。
おでこに、そっとキスをした。
そして耳元で「ごめんね、頑張ってくれてありがと」って言ったら、かすかにAの指が動いたんだ。
偶然？
いや、ちゃんと俺の声に反応したんだよな。
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2018年5月14日 22時
