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ドライヤーの最中は、音がうるさくて話せないから。
目をつぶって三分くらいの沈黙。
自分のシャンプーの香りが嬉しくて、生まれ変わったみたいだ。
ショートカットだと、あっという間に乾く。
有岡「はい、大丈夫かな?」
A「うん、ありがと。
首元濡れちゃってるし、体拭いて着替えるね」
有岡「おぉ、手伝うよ」
A「じゃあ、背中だけ拭いて」
有岡「遠慮すんなって」
遠慮じゃなくて、他の人にこの会話も聞かれてるのかと思うと、恥かしいんだってば。
だけど、廊下に置かれた体拭き用の温められたタオルを二本持ち、すでに準備万端な様子。
A「今日ね、針とか全部抜けたの。
背中の針、ないでしょ?」
有岡「あ、ホントだ。
麻酔だったんだろ?痛くねえのかよ」
A「まあ、ずっと痛いけど、我慢出来る範囲かな。
あっ、ねえねえ、パジャマね自分の着ようかと思って。
授乳の時、病衣だと全部出ちゃうからさ」
有岡「え?マジで?」
A「うん、マジで・・・ふふっ」
有岡「あ、嘘だ・・・」
A「ねえ、背中拭いて」
有岡「あ、誤魔化した」
A「中学生みたいな事言ってないで、はい、背中お願いします」
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背中を拭いてもらった後は、強引にカーテンの外に出てもらって、あとは自分で拭く事にした。
私自身、少しだけ回復してきて、人に任せなくても出来るようになってきたからね。
着替えも終わって、カーテンを開けようと思ったら、いつものようにナースステーションから呼び出された。
看護師「有岡さん、赤ちゃん泣いてるんできてください」
A「はい、行きます」
カーテンが揺れ、大貴が顔だけ出した。
有岡「桃ちゃん、オッ パイ?」
A「うん、多分。
私も、張ってきたし」
有岡「あのー、メシ食ってきてもいい?
何も食ってきてねえんだわ」
A「いいよ。
搾乳(さくにゅう)したりするし、時間かかるから」
有岡「搾乳?」
A「飲みきれなかったのを、しぼるの。
ほぼ、牛だよー」
有岡「え・・・飲みたい」
A「あ??」
また変な事言いだしたので、腕を引っ張りカーテンの中で内緒話。
A「桃ちゃんのだから」
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作者名:やまぱん | 作成日時:2018年5月14日 22時