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伊野尾「現場に出て、飛び込み営業の研修が二週間あって。


  その期間中に、一台売ってきちゃって。


  みんなビックリしてたんだけど、でも、俺はそんなにビックリしなかった。


  だって、ノートになんかいっぱい書いて、勉強したり研究したりしてんの知ってたから。


  俺だったら、門前払いされたとこなんて、完全無視すんのに、Aちゃんは、対応してくれた人の事、事業所の規模、コピー機が見えたら、どこの何が置いてあるかチェックしてたし。


  まあ、研修でそういう事教わったけど、俺がなかなか出来なかった事を、ちゃんとやってて。




  ちょっと長くなっちゃったけど、私とAちゃんは、その頃からの付き合いで。


  私が、ふざけた事言うと、ちょっと笑ってくれるのが嬉しくて。


  いつのまにか、ふざけた事ばっか言ってて、さっきみたいな事になってしまいました。




  あの頃は、基本無表情、飲みに行ってメガネを取る時だけは、柔らかい笑顔を見せてくれて。


  で、今、すっかり女の子になって、可愛らしい旦那様の横で、ずっと笑ってるAちゃんを見ることが出来て、本当に嬉しいです」






伊野ちゃん・・・・









続き・・・あるの?



手が震えて、紙をじっと見てるけど・・・










伊野尾「Aちゃんには、本当に幸せになってほしくて・・・」









言葉を詰まらせた・・・








伊野尾「大切だと思える人と・・・・一緒に・・・・・



  笑顔の・・・・明るい笑顔の絶えない・・・・



  素敵な家庭を築いてください・・・・



  きっと、有岡なら、Aちゃんの事、大切にしてくれると思うから・・・



  ちょっと、父親の気分で・・・



  大切な娘を・・・嫁に出す気分です。



  本当に良かった・・・嬉しいです。



  いつまでも、お幸せに・・・・」






最後の方は、もう見てなかった紙を閉じ、ポケットにしまった。




そして、一歩下がり、深々と頭を下げた。





私の目からは、涙が止まらず・・・






こういう時、アテンダーさんがいれば、ハンカチを差し出してくれるなって思ったら、


私より大泣きしてる美枝が、「二枚あるから」ってハンカチを貸してくれた。



美枝・・・私の結婚式に、二枚ハンカチ持ってくるとこ、らしいな。




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作者名:やまぱん | 作成日時:2018年2月21日 21時

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