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A「お腹空いたね」
有岡「あ、もしかして気持ち悪いんじゃない？」
A「まあ、そうだね。
アメなめてるから、とりあえず大丈夫だけど。
ねえ、お昼さ、あそこ行かない？」
有岡「ん？どこ？」
A「あの、大貴とこっちで初めてご飯食べた牛タン屋さん」
有岡「うん、いいね」
やっと笑顔が出た。
改札を抜ける時以外は、ずっと手をつないでいて、私のキャリーケースを引いてくれてるから歩きづらいと思うんだけど。
それでも、私がどっかにいかないようにって、つながれてるっぽい。
・
牛タン屋さんの入り口で、「二人」を示すピースの形を店員さんに示し、レジの後ろに荷物を預かってもらった。
あの日以降も、何度か食べに来た。
そのたびに、胸の奥がギュッて痛くなったけど。
結婚した今も、あんな風に取り乱す大貴を見て、あの頃の気持ちに、ちゃんと卒業しなくちゃいけないって思った。
偶然にもあの日と同じ席に案内された。
A「何にする？」
有岡「んー、今日は普通に牛タン定食にしよっかな」
A「私も」
大貴は大盛を注文していた。
食欲はありそうで、安心した。
有岡「あ、あのさ」
A「ん？」
有岡「ごめんね、さっき取り乱して」
A「ううん・・・私のせいだし。
でも、もうどこも行かないから、安心して」
有岡「分かってる・・・」
おしぼりに触れている大貴の左手を、引っ張った。
「何？」ってビックリした顔をしてる。
手の甲を上にしたまま、テーブルの上に置いた。
そして、マリッジリングを人差し指でなでた。
A「初めてこのお店に来た時、大貴、すごく強引だった。
私、あんな事したくせに、すごく嬉しくて。
色々謝らないといけないけど、会いに来てくれてありがとね。
ホントに感謝してるよ」
有岡「いや、あの時は、ウジウジしてたら、また逃げられちゃうんじゃないかと思って」
A「もう、そんな風に思わないで。
今日から、ちゃんと夫婦として一緒にいられるんだし、何も怖い事なんてないんだから」
有岡「うん・・・俺って情けねえよな」
A「そんな事ないよ。
サプライズの結婚式とか、大貴ってすごいなって思ったし。
いつも私を守ってくれて、ありがとね」
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2018年1月21日 21時
