4 Daiki ページ4
Daiki
Aの手を離し、サイドテーブルに置かれたティッシュの箱から、二枚ティッシュを引っ張り、たたんでからAのほっぺを拭いた。
有岡「んー、俺じゃダメか。
情けねえなー。
何の役にも立たねえのか、俺は・・・」
持ってたティッシュを、パーカーの袖をまくり上げ、Aの手のひらに乗せた。
ソファーから立ち上がり、ベランダに続く窓の前に立った。
窓の前に立ったけど、洗濯物がキレイに干されていて、外の景色が見えるわけじゃなくて。
この重っ苦しい空気を入れ替える為に、窓を開けてみた。
長袖のTシャツ一枚と、スエットに裸足の俺には、ちょっと寒かったけど。
何か、頭を冷やしたくて、そのままベランダのサンダルをはいて、洗濯物をかき分けた。
洗濯物も冷たくて、ヒヤッと気持ちが縮んでいった。
・
すげー偶然だけど。
信じらんないくらいのタイミングで、妊婦さんと旦那さんだと思われる二人が、アパート前の道を歩いている。
大きなお腹を左手で支えてる妊婦さん。
妊婦さんの腰を支えてる旦那さん。
・
はーーっ。
俺の未熟さを、呪いたい。
慌てて、部屋の中に入ったのに、ソファーにAがいなくなってて。
有岡「A！どこ行った」
カウンター越しにキッチンをのぞいたけど、さっきの引越の荷物が散らかったままだし。
寝室の扉を開けたけど、いなかった。
浴室に行こうと思ったら、少しだけ扉が開いた、トイレのドアが目についた。
鼻をすする音がしている。
有岡「A、大丈夫？
開けてもいい？」
やっぱり返事はない。
有岡「開けるよ」
そっと扉を開けると、トイレの床に座り込み、洋式トイレの前で、泣いている背中が見えた。
有岡「A・・・気持ち悪いの？」
また返事をしてくれないから、Aの右肩に手を乗せ、顔を覗き込んだ。
涙で顔をグチャグチャにして、眉間にシワを寄せていた。
洗面所にある、洗濯してあるタオルを出し、右肩からAの前に差し出した。
A「ありがと・・・」
やっと、声が聞けた。
よかった・・・・
有岡「なあ、ここ寒いからさ、リビング行こ。
洗面器持ってきてあげるから。
ね？」
Aの右腕を引っ張り、ゆっくり立ち上がらせた。
口元にタオルを当てたまま振り返り、泣きそうな目で俺を見た。
・
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2018年1月21日 21時
