30 Daiki ページ30
Daiki
A「おかえりなさい。
お仕事お疲れさまでした」
モコモコのパーカーの下は、パジャマを着ていて、もうお風呂から出たのはすぐに分かった。
有岡「ただいま。
体調は、どお？」
A「大貴に会えると思うと、気が抜けるのか、さっきからムカムカする」
有岡「やめてよ。
俺と会うのが嫌とかじゃないよね」
カバンを玄関に置き、寝室でスーツを脱ぎだすと、寝室に積んである段ボールの中から、靴を一足出した。
A「違うよ。
ねえ、これ買っちゃった」
何のへんてつもない、黒のパンプス。
いつも仕事の時に履いてるようなのだった。
有岡「うん、いいんじゃない？」
A「ねえ、よく見てよ。
これ、ヒールの高さが低いやつ買ったの。
今週履いてたんだよ」
最初、何の報告かわかんなかったけど、この柔らかい笑顔を見て、気が付いた。
有岡「ヒールが高いと危ないから？」
A「うん。
あぁ、もう消臭スプレーして、新聞紙に包んであるから、大丈夫だよ」
有岡「別に、そんな事気になんねえけど。
Aの靴なら、舐められるし」
A「やだ、気持ち悪い！」
スーツを脱いだ俺に、パジャマとバスタオルとパンツを、押し付けるように渡してきた。
有岡「気持ち悪いって、言うな！」
そのまま脱衣所に移動したら、ついてきた。
A「出たら、お風呂、キレイに洗っておいてほしいの」
有岡「うん、いいよ」
俺が脱ぎだしたのに、それをじーっと見てるんだよ。
珍しいから、聞いてみた。
有岡「どした？
俺の裸、見たくなっちゃった？」
A「えっ！！
ちょっと、やだ・・・そうじゃないってば。
それ、洗濯したいなって思って。
あっ、いや・・・ダメだ。
バスタオルも洗いたいから、まだだ。
そうだ、まだだ・・・」
何か、ブツブツ言いながら、リビングの方へ消えていった。
来年30になるってのに、そういうとこが可愛いらしくて。
つい、からかいたくなる。
・
・
風呂から出て、キッチンに入ると、ガランとしていた。
冷蔵庫をあけると、真っ暗で、何も入ってなかった。
有岡「あっ・・・」
俺のその「あっ・・」が聞こえたらしく、カウンターの向こうから話しかけられた。
・
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2018年1月21日 21時
