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院内用の電話で話しながら、手を振り仕事に戻っていった。
私は、やっとおにぎりの封を開け、大きなひと口で、ゆっくりと食べ始めた。
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会わなければよかったと思っていたのに、最後は、大ちゃんのペースにのせられていた。
懐かしい声、たまに活舌が悪くなる話し方、キレイな指をくるくる動かす仕草。
ダイキにそっくりな唇が、私の名前を呼んでくれて、結婚したいと言ってくれた。
ずっと好きで、ダイキを通して、大ちゃんの事を考えない日はなかった。
そんな思いを素直に言える勇気を、誰かください・・・・
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この大きな木は、多分ケヤキの木。
9月の日差しは、まだまだキツくて。
ケヤキの葉の陰と、海の方からくる風とで、ここは涼しくて気持ちいい。
ダイキがお腹にいる頃から、検診のたびにここのベンチに座ってこの景色を眺めていたから。
大ちゃんがお気に入りの場所と言って連れてきてくれた時は、胸が高鳴った。
初めてここのベンチに座ったのは真冬だったから、落葉していて木が寒そうだったなって思い出した。
あの海を見て、話しかけてた。
大ちゃん、赤ちゃん出来たよって。
私に、赤ちゃんを宿してくれてありがとうって。
それに、会いたいって思っちゃって、すぐにその思いを消したんだっけ。
その後、涙が出てきちゃって。
嬉し涙だよって、お腹の赤ちゃんに話しかけたんだ・・・
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買い物をした後、いったん家に帰り、家事をした。
いつもは、仕事が終わると、急いで保育園に迎えに行き、スーパーで買い物をして、帰宅する。
洗濯物を取り込んで寝室に投げ、急いで夕飯の仕度をする。
早朝に、夕飯の下準備はしておくから、そんなに時間はかからないけど、それでも足元でダイキがぐずったりすると、思い通りに進まなかったりして。
何カ月ぶりかに、ゆっくりと洗濯物を取り込んですぐに畳み、冷凍保存出来るおかずのしたごしらえを、自分の好きな音楽を聴きながらする事が出来た。
別に、子供がいらないわけじゃなくて、たまにこういう時間があるといいなって思えた。
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そろそろ、待ち合わせの時間だから、久しぶりに口紅を塗ってみた。
そんな事、気づかれないかもしれないのにね。
バスに揺られてる間、ドキドキが、どんどん大きくなっていく。
一度だけ乗せてもらった、白い大きな車が視界に入ってきた。
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作者名:やまぱん | 作成日時:2017年10月20日 20時