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A「痛っ!」





振り返ると、やっぱり山田くんだった。

きっと何かを告げに来たんだろうけど、

私の目から溢れる物を見て、息をのんでいた。





A「離して・・・

  授業、始まるよ・・・」






山田「ごめん・・・」






泣きそうな男の子を残し、急いで改札を抜けた。




















昨夜は、あのまま何も食べず、お風呂に入って寝てしまった。


こんなに淋しい誕生日は、初めてだった。


葵にもらったプレゼントが、入浴剤の詰め合わせだったので、


早速、冷めきった体と心を温めた。


それだけが、心の救いだった。










A「塾長、昨日はお騒がせしてすみませんでした」



頭を下げる私に



塾長「子供たちに、からかわれるなよ!

  しっかりしろよ!」




優しくそう言ってもらったけど、まだまだ社会人としては未熟だなって感じていた。




今日は高校二年生の授業は、数学難関コースだけだから、

山田くんには会わないと思うと、少しホッとした。

昨日借りたジャージも、今朝洗濯して干してきたので返せないし。








バイトが終わり、いつものように22時ちょっと前に駅に向かっていた。



ロータリーに差しかかった時に、暗闇から声がした。




「先生・・・・A・・・先生」





え?


周りをキョロキョロしたけど、どこから呼ばれてるのかわからなかった。



視界に入ってきた人は、いつもと違ういで立ちだったので、

その人と認識するのが遅れただけだった。




いつもは、白い長袖のワイシャツを腕まくりして、

グレーの制服のズボンを、少しだけ腰ばきをし、

黒のローファーを引きずるように歩いている。




それなのに、今日は、白いTシャツの上に、赤いチェックのシャツを羽織り、

下はスリムな黒のパンツをはき、

足元は、白いハイカットのスニーカーをはいていた。






山田「何度も呼ばせんなよ。

  下の名前呼ぶの・・・ハズイんだからさ」





そう言われたら、山田くんに初めて下の名前を呼ばれたかもしれない。


塾の生徒達も、大学の友達も、下の名前で呼ぶことが多いから、なんとも思った事がなかったけど。






A「ごめん・・・

  どうしたの?こんな時間に」






山田「待ってた・・」






さっきまでこっちに視線が向いていたのに、急に下を向いてしまった。




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作者名:やまぱん | 作成日時:2017年6月22日 17時

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