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ロビーのテーブルの上に、カバンの中身を全部出している私に向かって、
ちょっと嫌味な声が聞こえた。
山田「先生、何やってんの？小学生じゃ、あるまいし」
A「だって、傘、バッグに入れたつもりなのに、入ってないんだもん！」
山田「多分、貸せると思うから、しまえよ」
A「え？二本持ってるの？」
山田「俺は、これなんだけど・・・」
バッグの中から、ウインドブレーカーのような、カッパの様なものを見せ、
出入り口の自動ドアの外に出た。
慌てて着いて行くと、ドア外の屋根の下で、生徒達がザワザワしていた。
少し離れた所に、黒塗りの車が停められていて、
丁度、車のドアが開き、黒いスーツの紳士が、大きな黒い傘を差し、こちらのビルに近づいてきた。
ザワザワもピークに達した時に、その紳士が声をかけた。
紳士「涼介さん、お迎えにあがりました」
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周りの雑音が聞こえる中、山田くんはその紳士に向かって話し出した。
涼介「わりぃ、俺、チャリあるし、これ着てくからいいわ。
でもさ、先生、傘忘れちゃったみたいだから、送って行ってくんない？」
そう言って、私の背中をグイッと押し、紳士の前に出された。
紳士「先生、いつもお世話になりまして、ありがとうございます。
それでは、車まで、こちらの傘をお使いいただいて・・・」
小脇に抱えられていた、もう一本の傘を差しだされたので、それを受け取り言った。
A「いや、あの！これ、お借り出来れば帰れますんで。
大丈夫です！すみません、お借りします！」
紳士「いやいや、涼介さんから言われましたので、私共、そうさせていただきます」
そんな会話に、全然入ってきてくれない山田くんは、カッパを上下着始めた。
そして、バッグだけその紳士に渡すと、
山田「じゃあな先生、送ってってもらえよ！
坂本！業務命令だかんな！」
紳士「かしこまりました。
お気をつけて・・・」
最初は、フラフラとスタートしたのに、
あっという間にタイヤから水しぶきをあげ、
暗闇に消えていった山田くんに対して、
頭を下げている光景は、まるでドラマのようだった。
ザワザワの原因が去って行ったので、
みんなもすごい雨の中、バラバラと解散し、
残されたのは、私と紳士だけになった。
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2017年6月22日 17時
