第六章 ページ20
はじめくんが部屋に来て、処遇を伝えるから広間に来いと言い私は大人しくそれに従う
いよいよ審判が下される
それは吉と出るか凶と出るか
死ぬ覚悟はできている
出来てはいるが、やはり死ぬのは怖い
一度死んでいるんだから、なんて思えない
あの時は気づいたらって感じだったし
やはり車に撥ねられるのと、斬られるのでは全く違ってくる
心臓の音がうるさい
ドクンドクンと脈打つたびに自分の耳にその音が伝わってくる
緊張と恐怖とでか、口内が乾く
暑いわけでもない、寧ろ冬なのに大量の汗が背中を伝う
手汗も酷い
上手く呼吸が出来ない、息苦しい
目眩もする、耳鳴りもする
足も鉛のように重い
生きた心地がしない
広間までの廊下がとても長く感じる
「ーー副長、連れて来ました」
広間に着いたのかはじめくんが一声かけてから障子を開ける
中に入るよう促されれば、私はさっきと同じ位置に正座をする
私は少し俯いてゆっくりと瞼を閉じる
大丈夫、もう覚悟は決まってた
大丈夫、大丈夫、大丈夫
心の中で何度も何度も繰り返し、深く息を吸って吐くと同時に目を開けて顔を上げ、ただ真っ直ぐと目の前に座っている土方さんを見る
「....(こいつ、入って来た時と雰囲気が変わりやがった。腹を括ったって事か。女だってのに、大した奴だな)」
「...........」
「お前の処遇を言い渡す。ーーーお前は新選組お預かりとする」
「........えっ?」
土方さんとの沈黙が続いた後、私に審判が下った
しかし、思っていたのと違ったため自分でも情けないほど間抜けな顔をしているだろう
思わず出た声も間抜けな声だった
「何だその顔は。てめぇは生かすっつってんだ。不満なのか」
土方さんは私の反応を見てより眉間にシワを寄せながら腕を組み言う
「.....い、いえ...ただ、思っていたのと違ったので、少し驚いて.....」
殺されない、私は死なない
これけらも生きる事ができる...?
そう思うと緊張の糸がプツンッと切れ一気に全身の力が抜ける
土方さんを見ている視界も少しばかり霞んで来た
駄目だ、泣くな
弱いとろこを見せるな
今は泣いちゃ駄目、耐えろ私
泣きそうなところを見られまいと、必死に目に力を入れて誤魔化すために縛られた手を床につき、頭が床に着くくらい深く下げながら私は心からの感謝の言葉を口にした
第六章
 ̄ ̄ ̄
(私はまだ、生きられる...!)
(女のくせに不覚にも強いと思っちまった)
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作者名:ぷー | 作成日時:2017年8月11日 20時