序章 ページ2
周りの人々は悲鳴をあげ、ぶつかった親子へと駆けよる者、救急車を呼ぶ者、運転手を車内から引き摺り下ろし逃さないようにしている者、と誰に言われるでもなくまるで与えられた役割のように、それぞれが動く
親子の周りには赤い血だまりがどんどん広がっていき、人々はもうダメだと思った瞬間ーーー
「ふぇっ...おぎゃー!!あー!!」
赤ん坊の泣き声が大きな叫び声のように響き渡る
周りにいた人々は慌てて安否を確認すると、そこには離すまいと、きつく、きつく母親の腕が赤ん坊を守るように抱きしめており、その腕の中にいた赤ん坊は腕を少し擦りむいていただけだった
周りの人々は安堵するも、母親の状態は思わしくない
今は辛うじて息をしているが、虫の息だ
救急車はまだかと、人々は叫び始めたその時ーーー
弱々しい声が聞こえてきた
人々はその声の先を見つめ、しっかりと聞こえるように誰もが口を閉ざした
「....あかちゃん...私の、子は......」
我が子の安否を確認したいと、母親はか細く震える声を発するが、口を開けば、ゴボッと吐血し
周りにいた人々は無事だ!あんたは子供を守ったんだ!と口々に言う声が聞こえ、更にーーー
「あぁー!おぎゃー!!おぎゃー!!」
赤ん坊が母親の間近で泣き声をあげる
それを聞いた母親は小さく微笑むとーーー
「.....よかった...あの人.....に...ごめん、なさい...と...」
大切な人との間にできた愛する我が子の安否を確認すれば、安堵の表情になり
絞り出す声で、赤ん坊の父親である最愛の人に謝罪を伝えて欲しいと、周りにいる人々に言えばプツンッと糸が切れたかのように、我が子をきつく抱いて守っていた手がだらんと地面につき、瞼は固く閉ざされ、もう二度とその優しい眼差しを愛する人と愛する我が子に向けられることはなかったーーーー
いつしか雨は止み、最後まで我が子を守り抜いた母親を雲間から覗いた太陽が、優しく照らしていたーーー
序章
 ̄ ̄
(大好きな二人と、もっともっと一緒に居たかった....)
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作者名:ぷー | 作成日時:2017年8月11日 20時