88話 side黄猿 ページ6
side黄猿
本当にそこに通りかかったのは偶然だった。
その日。遠征任務を終えた後、此方の方が早いからと1人で本部に帰ると部下たちに伝え、暫く付近の島々をフラフラしていたのだ。まあ、つまりはサボりである。あっしもクザンのこと強く言えないねェ〜なんて思っていたその時。
激しい戦闘音が聞こえ何事かと顔を覗かせれば。
やけに最近目を引く彼女が、そこにいた。
戦場を軽やかに駆け抜ける彼女。長い髪の毛が風に靡いて、陽の光に透けてキラキラと輝く様がなんとも幻想的で。情けないことに思わず見蕩れてしまった。
それにしても今日の彼女はどこか全体的に黄色い。
...少しだけ、己の色だと意識してしまったのは仕方が無いことだろう。
まあ、それは間違いでは無かったのだけれど。
『いやっふ〜!!八尺瓊勾玉〜!!』
「!」
一瞬心臓がドキリと跳ねた。
聞き間違いでなければ今、彼女は自分の技名を口にしなかっただろうか。
「まーたやってるよ中将。今度はなにしでかすかと思ったら黄猿さんごっこって...。」
「仕方ないな。中将の憧れの人は黄猿さんなんだから。」
「まあいつかはやると思ってた。」
「いやあの人ドーピング並に強くない??なんなの??これが俗に言う黄猿さんパワー?」
近くにいた彼女の部下たちの会話に、胸の鼓動が段々と早くなる。
「...」
無邪気な様子で己の真似をしながら海賊と戦う彼女の姿を見ると、急に愛おしさが心の底から湧き出てくる。
____可愛らしい。
なんて可愛らしいことをするのだろうか。普段から破天荒な台風の目の様な彼女、その実は裏で自分のことを慕っていたなんて。
年柄にもなく彼女の可愛らしさに胸がぎゅうっと締め付けられる感覚がする。
「...」
嗚呼。落ちたな、と。
バクバクとうるさい心臓にストンと納得してしまった。
___自然と緩んだ口元はそのままに。海賊の残党相手におちょくった問答を繰り返す彼女の元へ、ゆっくりと足を踏み出した。
(自覚する)
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神楽 - 2がパスワードが必要みたいなのでよければ教えてくれませんか? (6月29日 16時) (レス) id: 3767ef094f (このIDを非表示/違反報告)
shiro(プロフ) - 失礼します。こちらの作品の1を見てとても笑わせて貰いました!3を見る前に2が見たいのですが、パスワードはあるんでしょうか? (2022年7月4日 23時) (レス) id: ec5b8a1d5e (このIDを非表示/違反報告)
柊 - 話の内容が面白すぎます✧(✪д✪)✧更新待ってます!頑張ってください(๑ •̀ω•́)۶ (2022年5月4日 22時) (レス) @page15 id: a09d72e675 (このIDを非表示/違反報告)
鱗川 - おいしいくじら様の作品は全て神? そんなの当たり前!!!! (2022年3月8日 15時) (レス) id: d49fa68ddd (このIDを非表示/違反報告)
ワイ - ジャーマンプレックスのとこで吹いたw (2022年2月15日 20時) (レス) @page13 id: 1ff5fd8ffb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいしいくじら | 作成日時:2020年11月22日 20時