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「先輩、先輩……ごめんなさい、ごめんなさっ」
「茅ヶ崎こそしゃべるな、ほら、俺は平気だろ?」
涙がこぼれ落ちていく俺に先輩はふっと笑って余裕そうな表情を見せる。こんなときまで強がらないでほしい。
「ほら、上を向け、茅ヶ崎」
先輩の青い瞳には星が映っている。空を見上げると無情なほどに無数の星が煌めいていた。今ここでは戦争をしているというのに。
「あの星一個消えたって夜空の煌めきは変わらないだろ? そういうことだよ。俺の命はここまで、後のことは頼んだぞ」
「先輩にとって自分の命は無数の星々と変わらなくても、俺にとっては千景さんは真っ暗な中で一番輝いている月のような存在です、人になくてはならないもの。月があるから周期があって昔から人間は月の形をみて生活を送っていました。俺は、先輩を見て今まで頑張ってきたんです。お願いですから、いなくならないで……」
「茅ヶ崎、お願いだ笑ってくれ。最後に見る顔がお前の泣き顔は嫌だからさ。ほら?」
千景さんは震える手を俺の目元に添えて「笑って?」と言った。
「先輩、大好きです」
視界はもうぼやけちゃんと先輩の顔を見れない。いつもは笑顔を作ることなんて簡単なはずなのに、今はそれができない。今できる精一杯の笑顔でもう一度言う。
「千景さん、愛してます」
「あははっひっどい顔。ありがとう茅ヶ崎、また逢う日まで。愛してる」
それだけ言い残すと千景さんはゆっくり目を閉じ。その瞼が開くことは無かった。
俺はその晩が明けるまでずっとその場で大声で泣き叫んでいた。大切な家族が、死んだ。戦争で味方が死ぬことなんて今までもあったはずなのに、なんでだろう、ここまで泣くなんて。ここは戦争国家、家族が死ぬことなんて覚悟の上だったはず。それでも辛いですよ、先輩。貴方が亡くなった日はきれいな満月でしたよ。それからまた満月が訪れる度思います。
「また逢う日まで」
俺はそっと冷たい石の上に手を置き微笑みかける。
「今日からお前の上司になる卯木千景だ。よろしくな」
「初めまして、茅ヶ崎至です。よろしくお願いします」
「……お前、どこかで会ったことあるか?」
「いえ、本日が初めてだと思いますが……?」
「……そうか、俺の勘違いだったな。忘れてくれ」
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凜音@ねむい(プロフ) - ぽんさん» ほんとですね(汗)わざわざ教えていただきありがとうございます。多分外せたと思います……! (2021年7月31日 14時) (レス) id: fec22dbfd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凜音@ねむい | 作成日時:2021年7月31日 13時