道化師 ページ2
今日もショウが終わった。相変わらずの拍手と聞こえてくる歓声。あぁ、全く
『つまらない』
前職を辞めてからしばらくの間俺は困っていた。金が無い。途方に暮れ街中をフラフラと歩いていた時ドンッと肩がぶつかった。やっちまった、と思いすぐさま顔を上げる。
「すみません」
「ほぅ……ここであったのもなにかの縁。どうです? 一杯」
「えぇ、まぁいいですけど……俺手持ちが無いですよ?」
「大丈夫です。私がそれくらい出しましょう」
その後、俺は今の自分には似合わない程の洒落た店へ連れてこられた。
「こんにちは、いつものを彼にも」
「かしこまりました」
いつもの……ということは常連なのだろう。その男は確かに見た目もきちんとしており上品さがある。
「さて、一ついい話があるんだがどうだい?」
「どんな話だ?」
「なぁに、警戒することなど無い。簡単な話しさ」
「わかった、その話乗った」
「二言はないぞ?」
俺がやっていることはマジックでもなんでも無い。周りは天才だなどと言ってくるが俺がやっていることは道化師なんかじゃない。
ペテン師だ。
タネはある、だがそれはあの男に言われた薄汚いからくり。こんなもの騙していることと変わらない。金がほしいあまりに男が経営する劇場を使い俺がマジックを披露する。それで男は入場料を取り、俺にも金は回ってくるわけだ。すべてが分かっている身からすれば全くもってつまらない。そして、俺には観客を楽しませようという気持ちなど無いから道化、ではない。
いつもと同じようなショウが終わったある日、俺は決意を決め男のいる部屋のドアを叩いた。
「なぁ、もうこんなこと辞めにしないか?」
「こんなこと? まっとうな商売方法だろ?」
おかしい、いつもと口調が違う。
「はぁ、お前はまたか。また俺との契約を……」
契約? また? どういうことだ?
「まぁいい、それじゃあ今夜案内したいところがある。そこへ行ったらもうお前の役割は終わりだ。いいよな?」
「はぁ? まぁ、それで終わるならいいですけど」
「あぁ、大丈夫だ。二言はない。きちんと”終わる”」
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凜音@ねむい(プロフ) - 浜木綿さん» どうもありがとうございます。暇つぶし程度にあげていくつもりですので、目を通していただければ幸いです! (2021年4月3日 14時) (レス) id: fec22dbfd3 (このIDを非表示/違反報告)
浜木綿(プロフ) - はい最高 続きをお待ちしています! (2021年4月3日 13時) (レス) id: 000d45472d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凜音@ねむい | 作成日時:2021年4月3日 11時