暖かい場所 ページ27
『っ、……』
これでいい、これでいいはずなんだ。
もう人間じゃない。もういらない。
走って走ってどんなに走って逃げても苦しい。
人間じゃないのに、感情が文字になる。
口から言葉が飛び出そうになる。
「Aそっちにいかないで!!」
そんな声と共に飛びつかれた時、肩には人間の腕が置かれていた。後ろから腕で輪を作られてそれ以上走れそうもなかった。
『…や、きぱ』
「ｯ!!こっち!!はやく!!」
勢いよく手を引っ張られ、隣には人間がいた。焼きパンの声がする、人間。紛れもなくそれが焼きパンなんだと感じた。
「焼きそば遅い!!」
「ちょもう疲れたって〜」
「いや俺お前らは知らんよ？」
『うわっ?!』
そういった直後、こんそめらしき人が僕を持ち上げた。はっや。後ろに遠ざかっていく2人を見ていたら、その奥からなにか……ぼやけてなにかが見えた。
「A、俺見て」
突然そう言われそっちを見やると目が合う。
「ここの奴らはね幻覚で精神的に殺したりするから目瞑らなくてもいいけどあまりあちこち見ないで欲しい。ね、俺のこと見てて。」
いつになく真剣な横顔を見ていたら急に地面を走っている感覚が消えた。
「あやべw………ぐちつぼー!!」
「は?!お前なにやってんの?!」
「Aごめん、!!」
急に勢いよく空中で投げ出された………が地面に衝突はしなかった。ぐちつぼが受け止めてくれたらしい。
「もう大丈夫、…あいつやってる事おかしいだろwおい大丈夫かー？」
「おけおけw…よかったぁぐちつぼナイスキャッチw」
「こんそめキャッチしたの俺なんだけど。」
「ありがとありがとw」
「急にあんな上飛び出してくるとか思わねぇって。原人居なかったらお前死んでただろw」
「ほんとに死ぬかと思ったw」
「ホントだよバカが。」
あんなに突き放そうとした僕は色んな人に助けられていて、あの言葉で傷つけたはずのぐちつぼは笑っていた。
『…みんな人間だったんだね。』
「人間が嫌いだった意味わかるっしょ。」
「そうだな、まぁ今はああいう人間がうじゃうじゃいるししょうがないって思えるようになったから、もう平気だけど。」
「さて俺らも出ますか、あいつらもう出てるだろ。」
『ちょ、下ろして？』
「やだ、てかお前軽すぎねぇ？」
「おいずりーぞ」
『何がずるいんだよ』
「お前ら遅すぎん？」
「んなわけ……て嘘じゃんなんでこんな暗い？」
「はやく帰ろ」
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