この子に父親はいない 【神谷浩史】

新学年と春 ページ40

A)あのねかすみ


かすみ)なに？お母さん？


A)2年生になったけど、教室行ける？


かすみ)…さあ、知らない…。


A)そっか……。(もしまた、茉優ちゃんと同じクラスになったら…また塾に通わせなくちゃ。)


かすみ)…クラス見てくるね。


A)あ、うん、わかった。(大丈夫かな…。)


かすみ)羽山…羽山…。……あった！三組だ。…茉優とは違うクラスか。良かった…。


A)見てきた？


かすみ)見てきた！とりあえず教室行ってくる。おくってくれてありがとう！


A)かすみ。


かすみ)なに？


A)これ、お守り代わりに。


かすみ)うわあ！可愛い！星の小瓶！ありがとうお母さん！じゃあ行って来ます！


A)うん、頑張って。…さて、仕事行きますか！


私は最寄りの駅まで歩いた。車の免許は持ってないし、歩くことには慣れている。


A)うわ凄い人…やっぱり満員電車は苦手だな…。


けどこの時間の電車に乗らないと、収録に遅れてしまう。だから仕方なく電車に乗った。


A)ふう…。今日は座れた。


そう思っていたけど、それは一瞬だけだった。
私の目の前に、おばあちゃんが立っていた。流石にスルーする訳には行かない。


A)おばあさん、良かったらここどうぞ？


おばあさん)あらまあ、ありがとう。ご親切にどうも。よいしょっと…


A)荷物重くないですか？


おばあさん)大丈夫ですよ。ありがとうね。


A)いえいえ。


そして電車は動き出した。


おばあさん)あなたお名前は？あなたの声、どこかで聞いた事があるような…


A)へ？羽山…ですけど…？ああ、私声優をしているので！


おばあさん)羽山さん…。思い出したわ！確かバラエティー番組の喋りをしてた！


A)確かにバラエティー番組で喋ってましたよ！


おばあさん)あらまあ、そうだったの？ごめんなさいね、なかなか思い出せなくて…嫌な思いさせちゃったかしら…


A)いえ全然。寧ろ嬉しいです！覚えてくれてて。


おばあさん)それならよかった。これからお仕事…？


A)はいっ。おばあさんはお出かけですか？


おばあさん)ちょっと息子の家にね。ライン？を始めたんだけど、やり方が分からなくて…今日は休みだって聞いてたから…


A)最初は大変ですよねスマホ…私も買い換えた時は戸惑いました…


おばあさん)そうなのよ。なかなか難しくて…



それから私は、おばあちゃんが電車を降りるまで話をしていた。

先輩しなくちゃね。→←現状報告

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す