この子に父親はいない 【神谷浩史】

言える訳ない ページ32

A)……。


かすみ)どうしたの？お母さん？


A)……え、あ、ごめん…なに？


かすみ)大丈夫…？


A)うん、大丈夫…すぐご飯作るね。


かすみ)そういえば今日病院行って来たんだよね？どうだったの…？


A)っ…うん、異常なし！！


かすみ)良かった！安心だね！


A)うん、そうだね…


かすみ)今日も神谷さん来るのかな？


A)どうだろ…


かすみ)お母さん元気ない…？


A)そんなことないよ…？


かすみ)それならいいけど…


A)ちょっと疲れたのかな…ご飯作ったら休むよ…


かすみ)…？


言える訳ない…本当はガンになってたなんて…。かすみと一緒にいられる時間が短いなんて絶対に言えない…


A)……私の人生って……なんなんだろ……。仕事して、ご飯食べて寝て、仕事して……その繰り返し…声優になれたのに…かすみも生まれて育てて、神谷さんとの子で…本当に大切な人で……でも3年後に死ぬとか、なんで私だけこんな人生なの……泣


胸を張って生きようって…かすみが大人になるまで一緒にいるって決めたのに、これじゃあ約束を破ってしまう…かすみには私しかいないのに…どうして私なんだろう…なんで私だけこんな人生なんだろう…私は声を殺して泣いた。かすみにバレないように、かすみが起きないようにと…


神谷)……今の話、本当か……？


A)っ！？…聞いてたの……！？


神谷)嘘だよな！？お前が死ぬって………嘘だよな！？


A)静かにしてよかすみが起きちゃう……バレたくないの……。


神谷)どうするつもりだよ…


A)……分かんないよ…。そんなこと…。泣


神谷)A………………。


ぎゅっ…


A)っ！！っ…。死にたくないっ…死にたくないよっ…。泣


恥ずかしいなんて感情は、無かった。ただ必死に嘆いた。涙が枯れるまで神谷さんの胸の中で泣き続けた。









私は、その日神谷浩史に抱かれた。
同情という意味で…
プライドなんてものは、無かった。

最後の望みは…→←異常あり

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