この子に父親はいない 【神谷浩史】

苦しくてたまらない ページ22

A)だっる…。


かすみ)お母さんどうしたの？


A)ちょっとねー…。気にしなくていいから…。


かすみ)そう…？じゃあ、私学校行ってくるね。


A)うん、行ってらっしゃい。……苦しい。


かすみは不登校を乗り越えて、学校に行っている。私も頑張らなくちゃいけない、そう感じていた。でも私は…もう、限界が来ていた。


A)…そろそろ私…潮時かも…。やめて楽になる…？まだ続ける…？………どうなんだよ自分…。ああ、…苦しい…。誰かを好きでいるのって…苦しい…。っ…。っ…。誰か楽にしてよっ……泣


もう私は頑張れないかもしれない。
かすみが大人になるまで保てないかもしれない。
誰も慰めてくれないし、励ましてくれないけど、泣いた。
涙が枯れるまで。
頑張ってるのに、頑張ってるのに、あなたには届かなくて、イライラしてる。


A)だって、…あなたには家族がいるもんね…。私なんか選ばないよね…ただの【元カノ】だから… あなたにとっては、かすみの母親って認識でしょ… 絶対、大切な存在にはなれないんだ…。なら、諦めてしまいたい…神谷さんを待つのを、神谷さんだけを好きでいるのを…。


ガチャ。


神谷)A？かすみ学校行ったか？


A)いいよね？私頑張ったからもういいよね？神谷さんに振られてから、私ずっと我慢してきたんだよ？？かすみが生まれて、誰よりも大切な人との子どもを授かって、1人で育てるって決めたから…だから私はっ！！頑張って来たんだよっ…ずっと、1人でっ…。誰か褒めてよっ…。誰かっ…。


神谷)……………A……。


A)っ！！あ…。っ……。なんでいつもっ…。勝手に入ってくるのっ…。


神谷)…………頑張って…るよ……。


A)は…？質問の答えになってなっ…！！


ぎゅっ…。


神谷)お前はいつも頑張ってる…。1人でかすみを育てて、1人で家計をやりくりしていて、頑張ってるに決まってるだろ！！


A)何よっ…何よっ…。あなたには家族がいるくせにっ…私なんか選ばないくせにっ…。っ……うわあああああああああああぁぁぁあああああぁぁぁああああああああぁぁぁ！！！！泣


神谷)……………。


我を忘れて私は泣き叫んだ。
ちゃんと褒めてくれる人がいて嬉しかった。
家族じゃないくせに、優しくて、暖かい。









今だけは、この人に甘えていよう…
私の気が済むまで…
ありがとう、神谷さん…。


??)……………もう、終わりみたいね…。

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