転校生。 K.Akito

TWENTYSIX ページ26

.





「あのな、宮野さん。」



「はい？」



「一個、お願いがあんねやんか。」









突然真面目な顔をして言うから何かと思えば。









「そろそろ、連絡先交換せーへん？」









少し上目遣いで、顔の前に手を合わせてそんなお願い。









「いやです。」



「なんで！？･･･結構仲良うなったつもりやねんけどなぁ。」









あからさまにシュンとする姿が犬のようで、やっぱり桐山くんはどこかかわいい。









「連絡することなんかないです。」



「宮野さんからして欲しいわけやなくて、おもろいこととか美味しいものとか、

宮野さんに教えたいこと見つけたとき、連絡したいねん。」









こんなにまっすぐ見つめられたの、久しぶりだ。






あの日、“大丈夫？”と声をかけてくれたとき以来。









あたしはどうやら、桐山くんのこの目に弱いらしい。









「そういうことなら。」



「よっしゃ！」









別に連絡先交換するくらい、悪いことでもないし。









あたしからすることなんか絶対ないだろうから、知ってるだけでそれ以上でも以下でもない。









なんだか言い訳めいたことを自分にしながら、桐山くんの連絡先が電話帳に収まった。





.


今さらですが、明けましておめでとうございます。

本年も何卒、よろしくお願い申し上げます。

TWENTYSEVEN→←TWENTYFIVE

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す