67話 ページ20
寒い……
寒い……
たとえ鬼になろうとも……
地下牢という物は寒かった。
それにこの地下牢は、産屋敷邸からも本部からも遠い。柱の皆の屋敷からも遠い。
貴方「……」
私はお山座りで牢屋の端に蹲っていた。
貴方「どうして……私は鬼に……」
不意に童磨の顔を思い出す。
貴方「っ……」
あまね様が気にかけて毛布等を持ってきてくれたが寒さは消えない。
きっと、心が冷たく凍えているんだろう。
(『これも試練だ。』)
杏寿郎様ならそう言うのかな……
貴方「はぁ……」
せっかくの特訓の日々も、仇の思いも全て無駄になったような気がしていた。
あの時童磨にさえ会わなければ……
あの時私がもっと強ければ……
いっそ牢屋から脱獄しようか。
不可能ではない。
鬼となった私からしたら可能だ。
貴方「……杏寿郎様っ…私は貴方の羽織を纏い鬼にされ、こうして牢獄にいます………貴方さえも汚してしまった…………この惨めで役立たずの私をどうかお許しください……」
私は静かに涙を零した。
貴方「許されるなら…………もう私もそちらへ…………(涙)」
冨岡「……」
冨岡side
Aが鬼であるのを蝶屋敷で知った時、正直信じれず驚きが大きすぎて何も言えなかった。
Aは絶対柱を傷つけない。
混乱はしていたが自我はしっかりと持っている。それを分かっていたのに俺は……
炭治郎や禰豆子達の時のようにどうして庇えなかったのか。
(貴方『義勇!白樺亭の卵とじ定食は義勇と食べるから格別だよ!』)
冨岡「……」
どうして俺は……
俺を唯一友人として見てくれたAを助けられないんだ……
伊黒「ほぉ、冨岡。」
建物から出ると、たまたま伊黒がいた。
冨岡「……」
伊黒「浮かない顔をしているな。牢へ出向いたのか」
冨岡「Aを外に出せ。」
伊黒「やっと口を開いたかと思えばやはりそんな事か。分かっているのか?柱である人間が鬼になってしまったことの重大さや罪深さを。」
冨岡「あぁ。だがあいつは禰豆子よりも人間らしい鬼だ。自分の意思を持つ。涙を流す。」
伊黒「そんな理由が通じていれば、今頃俺達鬼殺隊なんぞ居ない。出す気は無い。死ぬまで」
冨岡「っ!」
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作者名:うじっしー | 作成日時:2020年8月20日 21時