好きだなんて 【宮侑】

44 苦手 ページ44

｢(美樹、もう来てるかな？)｣





家を出て、花火大会のある神社まで来ると

予想よりも早い時間からぞろぞろと

浴衣を着た女の子や、家族連れの人、

話したことはないけど同じ学校の人が

神社の階段を登って行くのが見えた。

しかし、待ち合わせの階段の場所に

美樹の姿が見当たらず、

そのまま階段を登っていく人を見届けるように

黙って立って美樹を待つことに。





｢あれ？西山？｣

｢あ、伊藤くん｣

｢何してんの？美樹は？｣

｢まだ来てないみたいだから、待ってるの｣

｢なんや、楽しみにしてたから早く来てると思ってた｣

｢私も｣




ぼんやり立っていると、

同じクラスの男の子と一緒に来ている

伊藤くんが声をかけてきた。





｢浴衣着たんや｣

｢うん｣

｢ええやん｣

｢ふふ、ありがとう｣

｢…じゃあ、な｣

｢うん、楽しんで来て｣

｢西山も｣




その会話を最後に、伊藤くんは友達の所に

走って行ってしまった。




｢(…美樹、遅いな。何かあったのかな)｣




手提げからスマホを取り出し画面を開くと




美樹大変申し上げにくいのですが…熱出た…
美樹めっちゃショック…
美樹ほんまごめん!Aだけでも楽しんで!!




見てみたら、美樹からメッセージが届いていた。




｢(あちゃー…大丈夫かな)｣




待ち合わせ場所に来る間、

一切スマホを見てなかったから気付かなかった。

｢大丈夫？しっかり休んでね！｣と

美樹にメッセージを送った。




｢(楽しんで、か)｣

｢…残念｣




しかし、美樹にはそう言われたけど

花火大会に1人というのは寂しすぎる。

他の仲のいい子もさっき来てるのを見たが

飛び入り参加というのも気が引けてしまう。




｢(帰るしかないよね…)｣




他の人が神社へ向かっているのに、

私はみんなとは逆の方向へ歩く。

なんだか悲しいような、虚しい気持ちになりながら

歩いていた時だった。




｢あ、プリンの子｣

｢？あ、治くん｣




すれ違いざまに誰かに声をかけられて振り向くと、

バレー部の人達と来ている、治くんだった。




｢帰んの？｣

｢うん、友達来れなくなって｣

｢そら可哀想に｣




思わず彼らを見るけど、その中に宮くんの姿がなかった。

すると、治くんは私から視線を外すと

｢あ｣と遠くを見つめて短い声を漏らした。

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