好きだなんて 【宮侑】

33 苦手 ページ33

｢いやー、んふっ、ぶっ...はっはは！｣

｢そんな笑わなくてもいいのに｣

｢普通痴漢されそうになってグラマーって...はっはっは！｣






痴漢だと思っていた相手は宮くんだった。

案の定、私の訳の分からない言い訳で

大爆笑をしたのだが、まだ引きづっているようだ。






｢はー、腹いた｣

｢楽しそうで何より｣

｢笑ったら疲れたわ、そこ座ろ｣

｢え、でもこの階段の上神社あるよ？｣

｢階段ぐらいなら神様も怒らんて｣






階段を2、3段上がったところに腰をかけて

夜空を見上げてみれば星が出ていた。





｢あー、星｣

｢あれなんの星だろ｣

｢夏の大三角｣

｢どう見ても三角形じゃないよ｣





まさか男の人と星を見るという

ロマンチックなことをするとは思わなかった。





｢ところで、なんで制服なん？｣

｢これ私の一張羅｣

｢嘘くさ｣

｢嘘だもん｣

｢ふっ、グラマー｣

｢そんな引っ張らないでよ｣





笑い声が隣から聞こえてくるたび、

私はさっきの恥ずかしい言い訳を思い出した。






｢宮くんは何してたの｣

｢ランニング。そしたらAちゃん居た｣

｢すごい偶然だね。私はウォーキングだよ｣

｢ウォーキングするなら歩きやすい服にすればええのに｣

｢...｣

｢...｣





無理やりではないけど、

上手く理由を言わせようとしているようだった。






｢お母さんたち喧嘩してたから、出てきちゃった｣

｢ふーん｣

｢お金かかるとか、私の面倒みなきゃいけないとか｣

｢...｣

｢面白くないでしょ、ただの重い話なの｣






宮くんはまだ暗い夜空を見上げたままでいる。

私は星を見る気にもならなず、

自分の足元を見つめていた。






｢で？俺はそれ聞いてどうすればええの｣

｢帰るとか、任せるよ｣

｢俺は、あー、星見てるわ｣

｢じゃあ、私は独り言喋ってる｣

｢存分にどうぞ｣





まったく興味がないのか、

それとも宮くんなりの気遣いなのか。

正直者の彼の事だ、真意は読めない。






｢迷惑、かけてないつもりだったのになぁ｣

｢あ、あれわかる北斗七星｣

｢全部私の思い過ごしだったんだ｣

｢あの星だけめっちゃ光ってるやん、見て｣

｢ごめんね、今は上向けない｣

｢なんで？｣

｢情けない顔してる｣

｢もう、泣けばええやん｣

｢笑うもん宮くん｣

｢そこまで薄情やない｣

｢......そっか｣






涙が零れて、大きな手が一瞬頭に触れたあと

名残惜しそうに離れた。

ああ、多分私はきっと。

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