好きだなんて 【宮侑】

4 苦手 ページ4

結局、あのLHRの時間で

私は宮くんと2人でHR長をやることになった。

さっそく、今日の放課後に

今度の原案審議で使う資料作りを任された。

机と椅子が並べられた空間に1人、

ホチキス片手に資料作りを始めた。

同じHR長の宮くんはどこかに行ってしまった。





｢(初めてHR長になったなー)｣





目立つことが苦手な私は、

今まで教科委員しかやっていなかった。

今年も教科委員をやるつもりだったのになあ。




｢(結構多い...電車間に合うかな)｣





ようやく1人分の資料が作り終わると、

結構大変なんだということが分かった。

これは早く終わらせないと、

帰りの電車の時間に間に合わない。





｢あ｣





急いで資料を作ってホチキスで止めると、

自分の人差し指までも止めてしまった。

ちょっと指を引っ張って見ると、

ブチッと皮が破ける音がした。





｢(あー、血出ちゃった)｣





皮が破けた部分からは

プクッと血が浮き出てきた。

制服に入れていたポケットティッシュから

1枚取り出して、私は傷口にあてた。





｢絆創膏...は、無いや｣





後で、血が止まってから保健室に行って

絆創膏を貰ってこよう。

私はしばらくの間、机に突っ伏した。





｢(なんか今日は、上手くいかないなぁ)｣





なんだかポカポカしてきたなぁ。

瞼も重くなってきて、私は目をつぶった。

・

・

・

バチン...バチン

その音が聞こえて目が覚めると、

またバチン、バチンと何かを止める音が聞こえた。





｢おはようさん｣

｢.........うっ？！｣

｢うってなんや、うって｣





顔を上げると、ホチキスを片手に

資料作りをしている宮くんが居た。

びっくりして体を起こすと、

体に何か掛かっているのに気付いた。





｢これ、宮くんが掛けてくれたの？｣

｢おー｣





掛かっていたのは、

宮くんが部活で使っている上着だった。

さすが男の子、サイズが大きい。





｢よし、終わった｣

｢あっ！ああああ！ごめんね私の仕事を！！｣

｢俺もHR長やし｣





なんかいつもの教室でいる感じの宮くんと、

今私の目の前にいる宮くんは感じが違う。

なんていうか、おとなしい？





｢上着ありがとう｣

｢どういたしましてー｣

｢宮くん時間大丈夫？これ私が先生に渡しとくよ｣





出来上がった資料を持って

職員室に行こうと立ち上がると、

宮くんの横を通ると腕を掴まれた。





｢ちょっと話そうや｣

5 苦手→←3 苦手

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す