甘いよりも【赤葦京治】

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｢か、帰ろ！風邪ひいちゃうよ｣






しばしの沈黙が流れて、

居た堪れなくなった私は帰ろうと提案した。

が、赤葦くんは私の腕を掴んだまま動かない。






｢忘れてるでしょうけど、
見合いの話、俺はいい方向に進めたいです｣

｢！｣

｢どういうことか、もう分かりますよね｣






その言い方は若干の苛立ちがあるけど、

どこか緊張しているところも感じられた。

待って、待ってよ。

ちょっ、キャパシティの問題が。






｢わ、｣

｢わ？｣

｢分かん、ない｣






こんな風に迫られて、

尚も知らない振りをするなんて。

私も大概酷いやつなのかもしれない。

でも、もし私の思ってることと

赤葦くんが言いたいことが合ってたら？

そうなったら、どうするの？






｢じゃあ、分かるように言ってあげますよ｣






そう言うとグイッと手首の方を掴まれ

私を逃がさないと言うように

腰に手を回されて一気に距離が縮んだ。






｢あんたのことが好きだって｣






熱い眼差し、冬なのに暖かい手、

私よりも高い身長。

全部、あいつもあったはずなのにこんなにも違うなんて。






｢す、好き...っ？｣

｢ええ、好きです｣

｢誰が...誰を...｣

｢俺が、Aさんを｣






いや、いやいやいや。






｢今までそんな態度1度も...｣

｢恋人いる人にそんな態度見せたら大変ですよ｣

｢あ！じゃあお見合いの話は！？｣

｢あれは黒尾さんへの対抗です｣

｢ええ...｣






そんなこと急に言われても、

本当、一個下の後輩でお隣さんとしか

赤葦くんを見れなかった。






｢今はまだ俺の事、好きじゃなくてもいいです｣

｢...｣

｢でも、これから馬鹿みたいにAさんにアプローチするんで｣

｢ば、馬鹿ってそんな...｣

｢振り向かせたいんですよ、絶対に｣






まさに現在進行形でアプローチ受けてますよ、私。

腰に回された手とか、

ずっと掴まれてる手とか、

近い距離でずっと見つめられてるとか。






｢言いたいこと言えたんで、帰りましょ｣

｢は、はい...｣






ふっと離された手首は、

未だに熱を持っていて、

顔も沸騰しそうなほど熱くて。






｢？なんでそんな距離あけるんですか｣

｢い、今はちょっと無理だから！｣






どうしようと悩む私と、

澄まし顔の彼。

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