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「僕はお前に普通の幸せを望んでいた。今からでも遅くはない、忘れたと言え」
いつもの覇気が感じられない。冷たく尖ったあの感じは何処にもない。

「嫌です、芥川先輩。私は今、幸せですから」
ふれ合う肌に温もりを感じる。
どんなに冷酷な先輩だって、人だと言うことに変わりはない。

「私、ポートマフィアに戻っても良いですよね? 先輩、言ってくれましたよね」
全く、良く覚えているな。

「……嘘も方便と言うやつだ。戻るな」
先輩、それは狡いです。

「何故ですか?」
わからないのか?

「お前には向いていない」
それくらい、知ってますよ。

「それだけなら、私は戻ります。また先輩の足手まといになるかも知れませんが……」
決して足手まといではなかった。よく活躍してくれた。

「駄目だ。僕ではお前を守れない」
守ってくれるんですか?

「何を言ってるんですか、守るのは私です。私が守られていてはいけません」
もう十分守られた。恩返しをさせてくれ。

「いや、僕が守りたいのだ。守らせてくれ」
それでは私が守られっぱなしになってしまいます。

「それが先輩からの命令なら、喜んで聞きます」
そうでなくても、聞いてくれはしないのか?

「そうやって素直にいれば良いのだ。守らせてほしい、だからマフィアへは戻るな」
頑なですね、わかってます。

「それは、命令ですか?」
違う、僕の願いだ。

「そうでないと聞かぬか?」
わかってますよ。先輩の願いだと。

「いえ、そうでなくても従います」
なら、良かった。


「有り難う、樋口……」
「有り難うございます、先輩……」
二つの声は重なり、静かな路地に響いた。

辺りは三人の人間の血で赤く染まっている。
その中で黒い服の男女が膝を付き、抱き合っている。彼らの顔は幸せに満ち溢れ、涙が頬を伝おうとしていた。

戦場には決してありえない様な光景が、そこには広がっていた。

エピローグ、後書き→←4、そして思い出す



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蒔愛(プロフ) - 日常的さん» いえ、文ストの中でも好きなキャラクターです。何かお気に障ることがございましたか?良ければお教えください。 (2018年4月28日 0時) (レス) id: 0e9106e5ea (このIDを非表示/違反報告)
日常的 - 作者さんは樋口が嫌いなんですか? (2018年4月28日 0時) (レス) id: f7c5d2c875 (このIDを非表示/違反報告)
蒔愛(プロフ) - 二葉さん» お読みいただきありがとうございました。感想ありがとうございます。 (2018年1月21日 13時) (レス) id: 0e9106e5ea (このIDを非表示/違反報告)
二葉(プロフ) - 拝読させて頂きました。切なさで一杯になり思わず涙が溢れましたが、4章の後半に差し掛かった頃には切なさとはまた違った涙が溢れるばかりでした。迚も心に残る良い作品でした。 (2018年1月21日 13時) (レス) id: aa4e1ad83a (このIDを非表示/違反報告)
蒔愛(プロフ) - ギオさん» お読みいただきありがとうございました。感想ありがとうございます。 (2018年1月17日 7時) (レス) id: 0e9106e5ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒔愛 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年7月22日 22時

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