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十一話 ページ12

二人は驚き、その青年が居たはずの場所へ駆けた。

曲がり道はない。青年がいるならばこの道しかあり得なかった。


「……消えた?」

「あぁ、その様だ」

「瞬間移動?」

「可能性は捨てきれんな」

二人は小声でそう囁き合うと目を見張りながら道を歩いた。



ふらり、青年が姿を現す。
先ほどの場所よりは進んでいたが、歩き続けていたのなら納得がゆく距離だった。


福沢も乱歩も、青年が現れた一瞬を見逃しはしなかった。
青年の体を被う様にしていた霧が、緑がかった光の筋と共に消え去った。



「異能力者か?」

「少なくとも、国木田君と同じ現象だね。自分の姿を消せる、透明人間になるみたいな能力かな」

「放っておくのは不味いと思わんか?」

「いっそのこと、殺人で揺すって探偵社に入ってもらったら?」

「妙案だな」

「どっちにしろ放置は不味いね、一般人に見付かったら大変だし」



福沢は静かに青年の後ろへ行き、その華奢な肩に手を乗せた。
青年は反射的に振り返り、その手を払った。



「あ、さっきの……。すみません、まだ気が動転していて……」

青年は福沢だと気付くとそう言った。いかにも好青年である。




「当然だろうな。
肉親を殺されているのだから」



後ろで乱歩が頭を抱えた。福沢よりも自分の方がこう言った心理戦は得意なのに。



「……何言ってるんですか、警察も自 殺だって言ってたじゃないですか。
仮に、殺されたとして誰が殺したんですか」

青年は平然と言ってのけた。



「あの時、僕はずっと部屋に居たんです。その間、ナオミが帰って来ただけで他に出入りはなかったんですよ?
一体誰が殺せるんですか」



「君の証言の通りなら、殺せるのは一人しか居ないじゃないか」

痺れを切らして乱歩が言う。


「縄の痕を見れば殺されて何てわかっちゃうんだよ。
警察もわかってただろうね。その上で、君を罪人にするのが忍びなかったから見逃したんだよ。
あんな男、死んだって誰も構わないしね」


青年の顔付きが変わった。心なしか暗くなっている。



「妹ちゃんも共犯でしょ?良かったね、妹が死ななくて。君が罪人になることもなさそうだし、一人ぼっちも免れた」


「……ナオミだけは守りたかったですから」


「……それは自供として捉えて良いのかな?」

「構いません。ただ、あの男は自 殺したと言うことにしてください。
それを約束してくださるなら、何でもします。
……お願い、します……」


青年は大きく頭を下げた。

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作者名:蒔愛 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年8月27日 0時

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