- 罪と罰 -【角名倫太郎】 (ページ7)

今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:8,453 hit

罪ページ7

△▼

『す、な…角名…っ』

俺の腕の中でAが咽び泣く。

｢喋んなくていい、から｣

抱き締める腕に少し力を入れて

柔らかな髪の毛を梳くと

Aも俺の背中に腕を回した。

人通りの少ない歩道で

抱き締め合う俺たちを咎める者は誰もいなかった。

＿＿＿＿思えばこれが、堕落の始まりだった。

．

．

．

｢ただいま｣

電気の付いていない寂しげな玄関に

挨拶をして靴を揃える。

自分の部屋に足を運んで

見慣れた風景に明かりを灯した。

壁に飾られた額縁に意識が吸い取られる。

『角名の部屋殺風景すぎやろ!!』

いつかみんなで俺の部屋に集い

テスト勉強をした時の事が頭に浮かぶ。

『せやったらこの前とった写真、飾ったろうや!!』

そう言って写真を現像してきたのは侑だった。

『…余っとったから。別に買ってきたとかちゃうからな』

シンプルで、かつ主張も忘れない額縁をくれたのは治だった。

『こうしたら、かわええやろ～』

額縁に、造花などの装飾を施したのはAで、

『俺が有名になった時のためや!!』

額縁の裏に捻りのないサインを施したのは銀だった。

まだ、侑とAが付き合う前の話。

関係が少しずつ、でも確実に

壊れ始めた今となっては

随分と昔のことのように思える。

｢…侑に合わせる顔ないな｣

深い溜息を吐き、

まだ手に残る体温を

振り払うようにベッドに身体を投げた。

△▼